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「苦しい中でもマイコンは稼ぎ頭」、ルネサスが新ファミリを投入プロセッサ/マイコン

2012年8月に収益基盤強化策を発表したルネサス。苦境が続く中でも、やはりマイコンは同社で最も収益性が高い事業のようだ。40nmプロセスを採用した車載向けの「RH850ファミリ」に続き、応用分野として「スマート社会」を意識した400MHz動作の新ファミリなど、数製品を投入する。

» 2012年10月23日 19時05分 公開
[村尾麻悠子,EE Times Japan]

 「苦しい中でも、マイコンは稼ぎ頭である」――。ルネサス エレクトロニクスのMCU事業本部 MCUシステム統括部で統括部長を務める渡辺照一氏は、東京都内で2012年10月23日に開催したマイコンの新製品説明会において、このように述べた。

 2012年度通期で、1500億円の赤字を計上するとみられているルネサス。2012年8月に収益基盤強化策を発表し、早期退職者の募集や事業構造の最適化、工場の再編などのリストラ計画を進めている*1)

 そうした苦境に陥っているルネサスにとって、マイコン事業は最も収益が見込まれるものだという。

ルネサスの渡辺照一氏

 ルネサスは計画的にマイコンファミリの統合、あるいは新ファミリの投入を続けており、2012年9月には、40nmプロセスを採用した車載マイコン「RH850ファミリ」の第1弾となる「RH850/F1Lグループ」を発表したばかりだ(関連記事:「低消費電力技術を結集」、ルネサスが40nm車載マイコンの第1弾製品を投入)。

 今回は、そのRH850ファミリに続き、ハイエンドの汎用マイコンファミリ「RZファミリ」を新たに投入すると発表した。300MHzを超えるクロック周波数で、データを高速処理することが求められるアプリケーションに向けた品種である。さらに、32ビットフラッシュメモリ内蔵マイコン「RXファミリ」に、低消費電力版と高性能版のシリーズを追加する。

 RZファミリとRXファミリの高性能版には40nmプロセスを、RXファミリの低消費電力版には130nmプロセスを採用している。渡辺氏は、「最先端の40nmプロセスと、コストパフォーマンスのよい130nmプロセスは、最も価格競争力のあるプロセスだ。(150nmプロセスや90nmプロセスを使用した)従来品よりも収益性の面では期待できる」と語った。

 ルネサスによれば、2012年の時点でRZファミリが対象とする市場の規模は5000億円。2018年には7000億円に拡大すると予想しており、ルネサスは同市場において10%のシェア獲得を狙う。

*1)ルネサスの事業再建に関する記事はこちら。
関連記事1:「退任よりも再建計画の実行が自分の責任」、いまルネサス社長が掲げる4つのプラン
関連記事2:ルネサスが収益基盤強化策を発表、2014年度の営業利益率は10%以上に
関連記事3:ルネサスがリストラ費用970億円を調達、1600億円の短期借入金も長期に借り換え
関連記事4:ルネサスが青森の後工程工場を売却、香川の半導体受託生産企業に

“制御とITの融合”を意識

 現在、個々の機器やシステムがネットワークでつながる“スマート化”が、自動車、ヘルスケア、ホーム/オフィスといったさまざまな分野で進んでいる。ルネサスの渡辺氏は、「マイコンを使った機器がネットワークにつながって、例えば電力制御、健康管理、交通システムといったサービスを提供するようになっている。(機器の)制御だけでなく、ITコミュニケーションもサポートできるマイコンのラインアップを拡充したい」と述べている。

 同氏はこれを「制御とITの融合」と説明し、この融合に必要な技術として「Connectivity(接続性)」と「HMI(Human Machine Interface)」を挙げた。よりスムーズなネットワーク接続機能、より見やすい表示機能、より高い操作性が重要になるとの考えからだ。

「制御とITの融合」のイメージ 出典:ルネサス エレクトロニクス (画像はクリックで拡大)

「Cortex-A9」を搭載

 この「制御とITの融合」を意識したのが、RZファミリである。ARMのプロセッサコア「Cortex-A9」を搭載しており、グラフィックス処理機能を強化した400MHz駆動の「RZ/Aシリーズ」と、通信機能を充実させた800MHz駆動の「RZ/Nシリーズ」の2シリーズを展開する。

 RZ/Aシリーズは、主にHMIの用途に向けたものだ。第1弾として、最大10MバイトのRAMを内蔵し、WVGA、XGA、OpenVG 1.1に対応したグラフィックス機能を搭載した製品を出荷する。

 一方のRZ/Nシリーズは、GビットイーサネットやUSB 3.0、PCI Expressに対応する通信機能を内蔵している。

 まずRZ/Aシリーズから、サンプル出荷を2013年第2四半期に開始する予定だ。

RZファミリのラインアップ 出典:ルネサス エレクトロニクス (画像はクリックで拡大)

産業機器向けに240MHz駆動品を用意

 RXファミリには、動作周波数が50MHzの「RX200シリーズ」と100MHzの「RX600シリーズ」がある。今回追加するのは、動作周波数を32MHzに落として消費電力を抑えた「RX100シリーズ」、RX600シリーズの120MHz駆動版、動作周波数が240MHzの「RX700シリーズ」の3種類だ。RX700シリーズは、ACサーボモーターやインバータといった産業用途において、200MHz以上の動作周波数へのニーズが高かったため、それに応えて開発したという。低消費電力のRX100シリーズは、主にセンサーやサブマイコンの用途に向ける。

 サンプル出荷の開始予定時期は、RX100シリーズが2013年第1四半期、RX600シリーズの120MHz駆動版が2013年第2四半期、RX700シリーズは2013年第3四半期(目標)となっている。

左はRXファミリのロードマップ。中央と右は、RX700シリーズとRX100シリーズの特長をまとめたスライドである。 出典:ルネサス エレクトロニクス (画像はクリックで拡大)

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