窮地のシャープが電子デバイス事業を強化、GaNパワー半導体市場に参入:ビジネスニュース 企業動向
シャープが、窒化ガリウム(GaN)を用いたパワー半導体市場に参入する。第1弾製品として、耐圧が600Vのパワートランジスタを発表した。
シャープは2013年3月14日、窒化ガリウム(GaN)を用いたパワー半導体市場に参入することを発表した。同社は、電子デバイス事業を強化する方針であり、カメラモジュール、照明用LED、センサー、タッチパネルシステム、パワー関連デバイスの5つを重点分野にしている。今回発表したGaNパワー半導体は、パワー関連デバイスの中で、蓄電システムモジュールと並ぶ2つ目の柱となっている。
今回の発表に併せて、定格電圧が600VのGaNパワートランジスタを開発、2013年4月よりサンプル出荷を開始する。サンプル価格は3000円。高耐圧や高速スイッチングといったGaNの利点を生かし、民生用途に向ける。
シャープは、以前よりLEDやレーザーの分野でGaNデバイスの開発に取り組んできた。その技術と、LSIプロセス半導体技術を融合して、今回のGaNパワートランジスタを開発したという。
GaNパワートランジスタ(左)と6インチのGaNパワートランジスタウエハー(クリックで拡大)
今回発表したパワートランジスタの主な仕様は、定格電流が8A、オン電圧が3.5V、オン抵抗が155mΩ、ゲート電荷量が13nC、逆回復電荷量が65nCである。
将来的には、GaNパワートランジスタだけではなく、周辺部品も統合した電源モジュールの提供も行う予定だ。GaNパワートランジスタは、2013年内の量産開始を目指す。広島県にあるシャープの福山工場にて、月産25万個を予定している。
シャープのGaNパワーデバイス事業 今後の展開(クリックで拡大) 出典:シャープ
- 「SiC」と「GaN」、勝ち残る企業はどこか?(前編)
品質やコストと並んで、設計開発者が関心を持たなければならないのが、「特許」だ。製品設計の前段階から、自らの新たな視点に基づく特許出願を心掛けることが重要だが、まずは技術者が自ら特許について調べるためのヒントが必要だろう。本連載では、特定分野を毎回選び出し、その分野に関する特許の企業別、国別の状況を解説しながら、特許を活用する手法を紹介する。
- SiC/GaNデバイスは離陸間近
シリコン材料をベースとするパワー半導体と比べて、高速かつ低損失で動作する特性を備えているのが、SiCやGaNなどのワイドギャップ材料を用いた次世代のパワー半導体である。これまで、高いコストや歩留まりの低さなどによって、SiC/GaNデバイスの量産はなかなか立ち上がらなかった。しかし、2010年以降、複数のメーカーによる量産化の取り組みが加速している。
- LEDを一新した「GaN」、次は電力を変える
SiC(炭化ケイ素)と並んで次世代パワー半導体の旗手として脚光を浴びる「GaN」(窒化ガリウム)。しかし、実用化が進むSiCと比べて、GaNの開発は遅れているように見える。GaNを採用すると、SiCと同様に電力変換時の損失を低減できる。さらに、SiやSiCよりも高速なスイッチングが可能だ。これは電源の小型化に大いに役立つ。しかし、ノーマリーオフ動作が難しいという欠点もある。こちらは電源には向かない特性だ。GaNの長所を伸ばし、欠点をつぶす、このような開発が進んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.