ボーダフォンは、世界最大級の通信業者としての強みを生かしつつ、M2M(machine-to-machine)事業においても全世界で約250人の専任チームを配置するなど、M2Mサービスのサポート体制を整える。日本では、自動車や民生電子機器、産業機器の3分野を中心にM2M事業の拡大を狙う。
ボーダフォン・グローバル・エンタープライズは2013年5月、グローバルなM2M(machine-to-machine)事業に関して、同社の強みや提供するサービスなどについて説明会を行った。同社は世界最大級の通信業者としての強みを生かしつつ、M2M事業においても全世界で約250人の専任チームを配置するなど、事業拡大に向けたサービス体制を整える。日本では、自動車や民生電子機器、産業機器の3分野を中心にM2M事業の拡大を狙う考えである。
M2M APACリージョナルビジネスディレクタを務めるNiklas Ekarv氏は、同社が考えるM2Mの可能性について、「M2Mは企業が顧客とのつながりを確認することができるものであり、企業がビジネスを発展させていくためにカギとなるソリューションである。そして、企業や最終消費者が製品の使い方を学び、使い方を改善することによって、ライフスタイルをさらに充実させるためのシステムでもある」と話す。その一例として、エアコンの利用状況をチェックするシステムや、バイクで走行したルートをチェックできるシステムなどを挙げる。これらはエネルギーの消費改善につながるという。
Niklas Ekarv氏は産業分野に関しても、「M2M技術を使うことで、サービス向上やスペアパーツの売り上げ拡大に結び付けることができる」と述べる。工場などに設置された装置の状態をモニタリングしたり、稼働状況をチェックしたりすることで、消耗部品の交換時期などを正しく把握することができる。部品を交換する時期が事前に分かり、設備の予防保全にもつながる。つまり、設備などの資産を効率よく使うことができ、稼働停止などによる無駄な時間とエネルギー消費の削減が可能となるわけだ。
ボーダフォンが提供するM2Mサービスの強みは、グローバルなサポート体制である。ボーダフォンはパートナーを含めて70か国以上にネットワークを持つ世界最大級の通信業者である。同社はM2M専任のグローバルチームを設け、現在250人以上が活動している。日本でも2010年よりM2Mの専任チームを設けた。Niklas Ekarv氏は、「日本市場では特に、自動車や民生電子機器、産業機器の3分野に注力していく」と述べた。
グローバルなサポート体制に加え、1種類のSIMカードで世界各地での移動体通信サービスを利用できるのも同社の強みだ。SIMカードの形状やハードウェア性能については通常仕様の「Standard Plastic」、耐環境性や読み出し/書き込み回数を通常より高めた「Robust Plastic」、および耐食性や耐震性を向上し、回路基板上に直接はんだ付けが可能で車載用途も含めた産業機器向けの「Standard Industrial」の3タイプを用意している。
「M2Mプラットフォーム」は、モバイル端末から顧客のイントラネットまでのコネクティビティを、無線通信とセキュアな固定通信を通して提供する。固定通信部分は方式としてインターネットVPNとIP-VPNを選択することができる。また、M2Mプラットフォームの管理機能を利用して、「SIMの状態を顧客が制御」したり「通信の履歴を取得」したりすることができる。このためのインタフェースとしてWeb GUIとAPIの2種類を用意した。
説明会では、テレマティクスの事例を紹介した。保険会社のTowers Watsonと提携し、自動車の運転状況に応じた課金保険商品「Usage Based Insurance(UBI)」などを開発した。実際に運転状況をモニタリングしながら、その履歴などを保存して、そのデータをベースに保険料などを設定することが可能となる。さらに、グローバルアセットトラッキングの事例も紹介した。海上輸送されるコンテナにグローバルSIMの通信ユニットを取り付けることで、コンテナ内の生鮮食品の温湿度管理などを適切に行える。コンテナの「見える化」で生産性を約30%向上することも可能となる、という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.