日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、DLP(Digital Light Processing)製品の事業戦略について語った。これまではディスプレイ用途が中心となっていたが、今後は自動車や産業機器、計測機器、医療機器といった新たな用途開発に注力していく。特に自動車向けDLP事業を2016年までに黒字化する。さらに、ディスプレイ用途以外の市場を新たに開拓していくことで、5年後にはDLP製品の事業規模を現在の2倍としたい考えだ。
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2013年10月17日、DLP(Digital Light Processing)製品の現状と今後の事業戦略について、東京都内で記者説明会を行った。DLP製品は、これまでディスプレイ用途が中心となっていたが、今後は自動車や産業機器、計測機器、医療機器といった新たな用途開発に注力していく。特に自動車向けDLP事業を2016年までに黒字化する計画である。さらに、ディスプレイ用途以外の市場を新たに開拓していくことで、5年後にはDLP製品の事業規模を現在の2倍としたい考えだ。
DLP製品はチップ上に数百万個のデジタルマイクロミラーが形成されている。このミラーを高速に制御し、外部から照射した光をミラーで反射させて映像を作り出す仕組みである。この構造を利用して、これまでは小型プロジェクションディスプレイを中心に応用製品の開発が進められてきた。
TIのDLP事業部でシニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャを務めるKent Novak氏は、「DLP製品の量産出荷が始まった1996年以降、その累計出荷数は2011年に3300万個を超え、このほど4000万個に達した」と話す。2009年より携帯機器向け「DLPピコプロジェクタ」を搭載したスマートフォンやデジタルビデオカメラなどが出荷されたことも、需要拡大の一因となった。さらに、2011年には映画館で「DLP Cinema」の採用数が、従来のフィルム上映を上回るなど、映画業界にも大きなインパクトを与えてきた。
ここにきて同社は、DLP事業のさらなる拡大に向けて、新たな用途開拓に取り組んでいる。例えば、自動車向け、産業用露光装置、3D計測、医療機器など、従来のプロジェクションディスプレイ用途とは異なる、新たなアプリケーションである。
一例だが、次世代自動車向けには、「ヘッドアップディスプレイ(HUD)」や、自由な形状が可能でタッチスクリーン機能などと組み合わせることができる「センターコンソール」、ヘッドライトの明るさや照射方向を制御できる「スマートヘッドライト」などを提案している。Novak氏によれば、「当社は(半導体事業を中心に)全売上高の約10%が自動車向けである。DLP製品も自動車向け特有の振動や放熱の問題をすべてクリアできている。自動車向けDLP事業として、2016年には利益を生み出すことができるだろう」と述べた。
さらに今回、DLPを応用した産業機械や医療機器などの設計を支援する評価モジュール「DLP LightCrafter 4500」に、TI製シングルボードコンピュータ「PandaBoard」との互換機能を追加した、と発表した。PandaBoardは、1GHz動作のデュアルコアプロセッサをはじめ、1GバイトのオンボードRAM、SDカードスロットなどを搭載している。これらを組み合わせて利用することでPCを使わなくても、マシンビジョンシステムや携帯型3Dスキャナー、フィールド用分光計などのシステム開発/評価が可能になるという。
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