アバゴ・テクノロジー(Avago Technologies)が、LSI Corporationを66億米ドルで買収すると発表した。両社には重複する製品群が少なく、この買収によってアバゴは、通信分野向けの製品ラインアップの拡充を図ることができる。
半導体業界の成熟が進んでいる。Avago TechnologiesがLSI Corporation(以下、LSI)を買収する計画を発表したことからも、その兆候が読み取れる。買収金額は66億米ドルで、融資を受けて現金で支払う。Avago Technologiesはこの買収によって、通信チップメーカーとして規模・製品ラインともに拡充を図る狙いだ。売上高の成長には時間がかかるとみられるが、利益は拡大すると予想される。
ウォール街の反応はおおむね良好で、両社とも株価が上昇している。ただ、今回の買収は、半導体市場の成熟が進んでいることの表れでもある。成長に陰りがみられる同市場で、リスク回避の必要があると感じている企業が増えているのだろう。
両社が手掛ける製品はほとんど重複していないため、この買収によって製品や技術に相乗効果が生まれる可能性もある。LSIはストレージ分野、特にHDDやストレージネットワーク基板、SSDコントローラ製品に強い。一方、Avago Technologiesは、事業の約半分を携帯機器向け半導体と基地局向けのRFチップが占める。残り半分のうち、主要製品となっているのは光半導体だ。
Avago Technologiesはこの買収によって、さらに幅広い製品ポートフォリオを備えるとともに、販売コストや一般経費、経営コストの合理化によって、年間2億米ドルのコスト削減を図りたい考えだ。Avago TechnologiesのCEO(最高経営責任者)を務めるHock Tan氏は、「LSIは優れた製品ラインを有している。製品ラインの削減やこの他のコスト削減の可能性についてコメントするのは時期尚早だ」と述べている。
米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでシニアアナリストを務めるJag Bolaria氏は、「両社にはASICやSerDes分野で重複する製品がある。ASCIのIP(Intellectual Property)コアは増えるが、より効率的な事業運営のためには、製品ラインの大幅な削減が必要だ」と述べている。
今回の買収によって、Avago Technologiesの年間売上高の成長率は、現在の12%から6%に下がると予想される。ただし、売上総利益と一株当たり利益、キャッシュフローは増加する見通しだ。
この買収は、両社にとって緩衝材的な意味を持つ。Avago Technologiesは、不安定なワイヤレス市場への製品投入を抑え、同社の売上高のうちワイヤレス事業の占める割合を50%から25%に削減する計画だという。
Avago Technologiesは、手元現金10億米ドルと銀行からの46億ドルの融資の他、プライベートエクイティ(PE)投資会社であるSilver Lake Partnersからの10億米ドルの出資を買収資金にあてる。このニュースを受け、2013年12月13日の株式市場では、LSI株は前週末比40%高で取引を終えた。
Avago Technologiesは、買収を2014年7月までに完了させたいとしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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