シャープは、PM2.5(粒径が2.5μm以下の粒子状物質)を検出するセンサーモジュールを製品化した。自社製空気清浄機やエアコンへの搭載を検討する他、幅広い用途への提案を行う。
シャープは2013年12月24日、PM2.5(粒径が2.5μm以下の粒子状物質)を検出するセンサーモジュール「DN7C3JA001」を発表した。空気清浄機やエアコンなど家電にも搭載できる小型サイズが特長。2013年12月25日からサンプル出荷を開始し、2014年2月から月産8万個規模で量産を行う。サンプル価格は1万円。
PM2.5は、工場の噴煙、自動車の排出ガスをはじめ、たばこの煙などに含まれる極小粒子状物質であり、昨今は中国での大気汚染の深刻化などから特に注目されている。PM2.5は2.5μm以下という粒径の小ささから、肺の奥まで入り込み、体内に蓄積されることなどから有害性を持つ。
PM2.5の特徴としては粒径が小さいことで、肉眼では見えないということがある。「PM2.5の濃度が高いと視界不良になるように思われているケースが多いが、視界を遮っているのは、PM2.5よりも粒径の大きなほこりなどが原因。仮に、ほこりなどなく、PM2.5だけが存在する場合は、何も見えずきれいな空気に見える」(電子デバイス事業本部システムデバイス事業部企画部参事藤田勝行氏)とする。
この肉眼では見えないPM2.5を検出するセンサーは、多くあるが、いずれも気象観測用などのもので、システムサイズが大きい。それに対し、今回シャープが開発したPM2.5センサーモジュールは53×40×51mmサイズで、空気清浄機などの家電にも搭載できる「業界最小サイズ」(藤田氏)を実現した。
気象観測用PM2.5センサーの多くがPM2.5の重さを計測しその濃度を測る一方で、シャープの開発したセンサーは、既にほこりセンサーなどで実績のある光学式を採用する。LED光をPM2.5に当てた場合に起こる光の散乱の有無を高感度フォトダイオードで検知し、PM2.5濃度を測定する仕組みだ。
ただ、ほこりもLED光が当たると光の散乱を起こすため、空気中からほこりなど粒径の大きな物質を取り除きPM2.5だけを抽出する「分粒器」が必要になる。シャープは今回、粒径が小さいほど慣性が弱い性質を利用し、PM2.5以下の粒子だけがフォトダイオードの前を通過する「バーチャルインパクタ方式」と呼ばれる構造の小型分粒器を実現した。
この分粒器は、空気を取り込むセンサー内蔵ファンの動作を調整することで、フォトダイオードの前にほこりを取り込むこともでき、1台でPM2.5検知機能とほこり検知機能の両方に対応できる利点もある。
測定できるPM2.5濃度範囲は25μg/m3〜500μg/m3。国内の環境基準である35μg/m3よりも低い濃度から測定できる。センサー出力は、電圧によるアナログ出力で「PM2.5の濃度を、数値表示するシステムを実現できる出力精度を備えている」とする。
シャープでは、PM2.5を集じんできるHEPAフィルタを搭載した空気清浄機などを展開中で、「当社家電製品への搭載に向けた社内提案を実施している段階」とし、近くPM2.5検出機能付き家電が製品化される見込み。同時に社外への拡販も実施する方針で、「家電の他にも、PM2.5の検出を手軽に行いたいという用途は多いはずであり、幅広く提案を行う」(藤田氏)としている。
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