パワー半導体の世界市場は、2013年実績の約143億米ドルに対して、2020年にはほぼ倍増の294億米ドルに拡大する。今後も白物家電や産業機器、自動車分野がパワー半導体の需要をけん引する見通しだ。SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった次世代パワー半導体市場は、2020年に約28億米ドル規模と予測されている。
矢野経済研究所は2014年8月、パワー半導体の世界市場予測をまとめ発表した。2013年実績の約143億米ドルに対して、2020年にはほぼ倍増の294億米ドルと予測する。今後も白物家電や産業機器、自動車分野が需要をけん引する見通しだ。SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった次世代パワー半導体市場は、2020年に約28億米ドル規模と予測した。
今回の調査は、2013年10月から2014年6月まで、パワー半導体メーカーやウエハーメーカーおよびシステムメーカーなどへのヒヤリング調査などによってまとめた。同調査によれば、2014年のパワー半導体の世界市場規模(メーカー出荷金額)は、2013年比6.2%増の152億米ドルと予測する。PCや液晶テレビなどに向けたMOSFETの需要が回復している。産業機器向けは中国市場向けの汎用インバータやサーボモータ、白物家電向けインテリジェントパワーモジュール(IPM)が好調に推移する。さらに自動車向けMOSFET、ダイオードが堅調に推移するとの見込みだ。
2020年までのパワー半導体市場見通しもまとめている。2013年から2020年までの年平均成長率は10.9%となり、2020年には294億5000万米ドルの規模に達すると予測する。パワー半導体の需要をけん引するのは、今後も白物家電や産業機器、自動車分野などが中心となる。
白物家電では、エアコンのインバータ化が世界的に進むものとみられ、耐圧600VクラスのIPMの需要拡大が予想されている。産業分野は汎用インバータやサーボモータなどの用途に加え、太陽光発電など新エネルギー向け機器などへの期待も高まる。特に2015年に向けてインドやブラジルなどで太陽光発電プロジェクトの立ち上げが予定されており、耐圧1200VのIGBTモジュールを中心にその動向が注目される。自動車1台あたりに搭載されるパワー半導体の数量も増えている。また、車両電源の48V化が本格化する可能性が高く、パワー半導体の新たな需要を生み出している。さらに、HV/EVの出荷台数は2020年に1200万台規模と予測される中、パワー半導体は技術革新を進めていくためのキーデバイスの1つとなっている。
パワー半導体業界で最も注目されている技術が、SiCやGaNをベースとした次世代パワー半導体と呼ばれる製品である。同調査によれば、SiCやGaNを中心とした次世代パワー半導体の世界市場規模は、2020年に28億2000万米ドルの規模に達する見通しだ。2013年からの年平均成長率は63.6%増と、高い伸びが予測されている。その背景には、ダイオードに加えてトランジスタの製品投入が本格化してきたことや、6インチなどウエハーの大口径化などによりチップコストの低減が見込めることなどがある。このために、シリコンベースのパワー半導体に比べて電力変換効率に優れた次世代パワー半導体への置き換えが、用途によっては急速に進むものと予想されている。
SiCパワー半導体は、太陽光発電用PCSやUPS、産業機器用電源などへの採用が始まっている。車載向けもPHV/EVの充電器に採用が始まっているが、メインのインバータに採用されるのは2019年以降と予測している。
GaNパワー半導体は、2015年あたりからサーバや通信基地局用の電源などでの採用が見込まれている。また、PC用ACアダプタやフラットディスプレイなどでもデバイスの評価がすでに始まっているという。
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