GPSチップやモジュールを手掛けるu-bloxが、事業の新たな軸として無線通信チップ/モジュール事業を強化している。第4世代(4G)の無線通信に関連した企業を2012年に相次いで買収し、2013年には同社初の4G通信対応チップの供給を開始する予定だ。
GPSチップやモジュールを手掛けるu-bloxが、事業の新たな軸として無線通信チップ/モジュール事業を強化している。第4世代(4G)通信用のソフトウェアとテストソリューションを開発していた「4M Wireless」を2012年4月27日に買収し、同年7月2日には「ソフトウェア定義モデム」技術をベースにしたベースバンドチップの設計・開発を専門にするCognovoを買収すると発表した。
u-bloxは、この2社を買収したことで、4G通信用の無線チップを自社開発する資産を手に入れたことになる。「今後、4G通信に対応した製品を市場投入し、無線通信チップ/モジュール事業を強化する基礎が固まった。2013年に当社初の4G通信対応チップの供給を開始する予定だ」(同社)という。モノのインターネットやM2Mといった用途に売り込む。
u-bloxが無線通信チップ/モジュール事業を強化している背景には、将来を見通した時、GPSの技術分野だけでは明確な差別化が難しくなることがある。今や、カーナビや携帯型ナビゲーションデバイスのみならず、携帯電話機、スマートフォンをはじめ、さまざまな機器にGPSが搭載されるようになった(関連記事:つながる広がる位置情報、あなたの機器に測位技術が載る)。GPSチップの技術開発が進んだ結果、「GPSチップの性能をさらに引き上げるには、これまでに比べて時間もコストも余計に掛かるようになってきた。しかも、チップ価格もだいぶ下がっている」(同社)という状況だという。
そこでu-bloxは、GPSチップ/モジュール事業に加えた新たな軸として無線通信チップ/モジュール事業に注目した。「GPSチップ/モジュールによって取得した位置情報を、無線通信を介して管理サーバに送るといった利用シーンが多くある。従って、無線通信チップ/モジュールを事業に加えることで、位置情報の取得・送信に必要な半導体製品を、当社で一括して提供できるようになる」(同社)。
同社の無線通信チップ/モジュール事業の歴史は2009年にさかのぼる。当時は第2世代(2G)の携帯通信モジュールを製品化しており、その後、第3世代(3G)の携帯通信に対応したモジュールを市場投入した。これらの2Gと3Gの通信モジュールには、Intelが開発・製造した無線通信チップを使っていたものの、顧客の要望に対する細かなカスタマイズに対応することを目的に、4G通信チップからは自社開発することを選んだ。「無線通信チップ/モジュール事業を強化するに当たり、肝となる無線通信チップを自社で開発しないことにリスクがあった。原価低減や製造・流通、品質管理といった観点で、自社でチップを開発した方がより良いという判断だ」(同社)。
現在の同社の売上高に占めるGPSチップ/モジュール事業の割合はおよそ9割にも達する。GPSチップ/モジュール事業との相乗効果によって、無線通信チップ/モジュール事業の売上高比率を高めていく方針だ。4G通信とGPSを融合させたコンボ製品の想定用途は、トラックやバス、タクシーなどのテレマティクスや、業務用モバイル端末などである。この他にも、子どもや高齢者の見守りシステム、自動販売機やATMの管理システム、環境モニタリングシステム、デジタルサイネージといった用途がある。
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