STMicroelectronicsとイスラエルの新興企業bTendoは、スマートフォン向けのプロジェクタディスプレイの開発を共同で進めてきた。STがそのIPを獲得するに当たり、bTendoの従業員もSTに移籍する。
STMicroelectronicsは、イスラエルの新興企業で携帯機器向け小型プロジェクタを手掛けるbTendoと2年をかけて共同開発したスマートフォン向けプロジェクタディスプレイのIP(Intellectual Property)を獲得したことを発表した。また、bTendoの大部分の従業員がSTMicroelectronicsに移籍することも明らかにした。
STMicroelectronicsは、次世代スマートフォンやデジタルカメラ、ノートPCへの同技術の搭載を狙い、既に顧客企業数社に対してサンプルモジュールの提供を開始しているという。
STMicroelectronicsは、同技術のIPを獲得するためにbTendoに支払った金額を公表していないが、その額は数百万米ドルに上るとも伝えられている。同社は、「bTendoからIPを獲得したことで、プロジェクタディスプレイの展開を加速できた」としている。bTendoと共同開発したピコプロジェクタの商用化については、具体的な時期は示していないが、2013年に市場投入するとみられている。
同ソリューションは、bTendoのスキャンレーザー投影エンジン技術と、STMicroelectronicsのMEMS技術、ビデオ処理技術、半導体製造技術を組み合わせることで実現した。STMicroelectronicsは、一部に提供している評価用のサンプルモジュールについて、「小型で低消費電力」と説明している。
スキャンレーザー投影エンジン技術を採用したことで、フォーカスフリーで高解像度の動画や画像を、手近にある壁などの平面に映し出せるという。これによって手軽にプレゼンテーションなどを行えるようになる。モジュールの容積は1.7cm3よりも小さく、厚さは5mmに満たないので、薄型の民生電子機器に組み込むことも可能だとしている。
厚みを抑えることは、電子機器の設計や製造において難しい課題であるが、スマートフォンやノートPCに搭載するには非常に重要な要素となる。
STMicroelectronicsのアナログ/MEMS/センサー事業部でジェネラルマネジャーを務めるBenedetto Vigna氏は、発表資料の中で、「当社はMEMSのパイオニアとして、また業界をリードするイノベータとして、スマートフォンやデジタルカメラ、ノートPCへの搭載に適した、小型でユーザーフレンドリなピコプロジェクタの開発に取り組んでいる」と述べた。
米国の市場調査会社であるPacific Media Associatesは、「ピコプロジェクタの出荷台数は、2011年は約300万台であったが、急速に増加し、2015年には5800万台に達する」と予測している。
bTendoは、シリーズA投資ラウンドでCarmel VenturesとBlueRun Venturesから700万米ドルの資金を調達して、2006年に設立された。同社の20人のエンジニアは今後、STMicroelectronicsの開発センターに移籍するとみられている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.