東芝は、米国のLED照明機器メーカーから、「GaN on Silicon技術」を含む白色LEDチップ開発関連資産の買収を発表した。白色LEDの低コスト化やGaNパワー半導体実現に欠かせないGaN on Silicon技術を手に入れ、ディスクリート半導体事業の強化を急ぐ。
東芝は2013年4月23日、米国のLED照明機器メーカーであるブリッジラックスから白色LEDチップ開発に関する資産を買収し、関連する同社研究開発部門の従業員(約40人)を受け入れると発表した。ブリッジラックスの白色LEDチップ技術は、シリコンウエハー上にGaN(窒化ガリウム)を結晶成長させる「GaN on Silicon技術」などの特徴を持ち、パワー半導体にも応用できるという。買収金額は「数十億円台後半」(東芝)とし5月中旬に買収を完了する見込み。
東芝とブリッジラックスは以前から、GaN on Silicon技術を使った白色LEDチップの共同開発を進め、2012年には東芝の半導体製造設備(200mmウエハー製造ライン)で同チップの量産を開始。同年12月には照明用白色LEDチップを発売していた。今回の買収により、ブリッジラックスのGaN on Silicon技術を東芝内に取り込み、東芝の半導体量産技術とのより迅速な融合を狙う。加えて、東芝では「買収する資産を活用しGaNパワー半導体の開発、製品展開も加速する」としている。
白色LEDチップは、サファイアウエハー上に結晶成長させたGaNを用いて製造する方法が一般的だ。これに対し、GaN on Silicon技術は、多くの半導体デバイス製造に用いられるシリコンウエハー上にGaNを生成するため、サファイアウエハーを用いた製造に比べ、大幅に製造コストを抑えられる。さらにサファイアウエハーでは、難しいウエハーの大口径化も、シリコンでは比較的容易になるとされ、生産効率も高められる利点もある。GaNは、次世代パワー半導体材料としても注目されており、GaNによるパワー半導体の実現には、コスト面からGaN on Silicon技術の確立が不可欠とされている。
なお、東芝では、白色LEDチップ市場で2017年3月期に世界シェア10%の獲得を目指している。
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