AMDが、コンピュータゲーム向けに8コアのプロセッサ「FX-9590」を発表した。動作周波数は最大で5GHzに達する。Intelが発表したばかりの新プロセッサ「Haswell」には、そこまで高い周波数を実現したプロセッサは、まだない。
AMD(Advanced Micro Devices)は、動作周波数が最大で5GHzに達するプロセッサを発表した。最大のライバルであるIntelに対する攻めの一手となるのだろうか。
AMDが発表したのは、PC向けの8コアプロセッサ「AMD FX-9590」である。高性能プロセッサの需要が高いコンピュータゲーム市場に狙いを定め、2013年夏にはシステムへの搭載を開始する予定だという。
AMDの新製品発表は、Intelが次世代プロセッサファミリ「Haswell」を発表してから、わずか数日後に行われた。Haswellの動作周波数の範囲は、現時点では1.7〜3.9GHzだ。
Intelはこれまで、新型プロセッサを投入する際に、コンピュータゲーム向けに性能を強化した「Extreme Edition(エクストリームエディション)」をリリースしてきた。具体的には、コア数やスレッド数、メモリチャンネル数などが多いバージョンになっている。しかし同社は、Haswellや、その前世代品である「Ivy Bridge」ファミリに関しては、Extreme Editionをリリースしていない。AMDはそこに、入り込む余地を見いだしたのだ。
Intelの広報担当者は、「当社は、動作周波数5GHzを実現するゲーム機向けのプロセッサを投入していない。しかし、多くのゲーム愛好者がオーバークロックを行っていることから、Intelの大半のプロセッサは長年の間、オーバークロックされて5GHzくらいの動作周波数で動いてきたことになる。また、Falcon Northwestなど、オーバークロックのプロセッサを搭載するシステムを標準モデルとして出荷している機器メーカーもある」と述べている。
5GHzのAMD FX-9590を搭載したシステムを出荷するのは、大手機器メーカーではなく、システムインテグレータである。これはつまり、AMDが、Haswellのラインアップの中に超高速の品種が欠けていることに気付いてから、大急ぎで部品を発注したためであると考えられる。
動作周波数5GHzの達成は、画期的な成果ではあるが、課題も残る。AMDとIntelはかつて、データ伝送速度の速さを巡って競争していた。近年では、半導体チップの消費電力量が非常に大きく、かなり放熱することから、消費電力1W当たりの処理性能を示すMIPS/Wや、熱量を表すJ(ジュール)でも競うようになっている。
PC関連技術の記事やホワイトペーパーの発信を手掛ける米国のReal World Technologiesでマイクロプロセッサ関連のアナリストを務めるDavid Kanter氏は、「AMDが記録的な動作周波数を達成したのは事実だ。しかしここで問題となるのが、現在のプロセッサは、動作周波数と性能が必ずしも比例しないという点だ」と述べている。
コンピュータゲーム市場は小規模であるものの、需要は高い。携帯型ゲーム機では実現しにくい高性能なゲームを求めるユーザーも多いのだ。デスクトップPCは、ホストであるx86プロセッサよりも消費電力が大きいグラフィックスカードを何枚も搭載している。このようなグラフィックスカードは、ゲームにおいて、処理量が大きいレンダリングのほとんどを行っている。
AMDは、米国カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されているゲームの展示会「E3 2013」(2013年6月11〜13日)で、今回の新製品を発表した。同展示会では、Microsoftが、家庭用ゲーム機「Xbox」の次世代機にAMDのチップを搭載することを発表している。
AMDは、5GHzのFX-9590の他、動作周波数が4.7GHzの「FX-9370」も発表した。両方ともAMDのクライアントPC向けのコア「Piledriver」を搭載していて、アンロック対応のため、オーバークロックが可能だ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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