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“Japanese English”という発想(後編)「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論 ―番外編―(4/4 ページ)

» 2013年12月16日 11時00分 公開
[江端智一,EE Times Japan]
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“Japanese English”という発想

 日本人がグローバルな場面に出ることが、世界的に本当に望まれていることなのかどうか、今でも私には分かりません。政治や教育に携わる人々は何度も「グローバル化」と言う言葉を繰り返しますが、誰も彼もがグローバル化に関わりたいのか疑問ですし、うそではないかとも思うこともあります。

 しかし、最後にもう一度、私が申し上げたいのは、もし、あなたが本当に世界に出たいのであれば、あなたは既にそのコミュニケーション手段を持っている、という事実です。

 それこそが、「日本英語」です。世界に対して胸をはって誇れる、日本の第二言語です。

 今、われわれ日本人に本当に必要とされていることは、より高度な英語教育ではなく、

「Japanese Englishという発想」

そのものなのです。

日本英語で世界に発信しよう

画像はイメージです

 「私たちは変わらなければならない」――というフレーズは聞き飽きました。

 もうこのフレーズを使うのやめましょう。私たちは、十分に努力してきたはずです。

 パラダイムをシフトさせましょう。つまり、「私たち“以外”の者を、変えなければならない」――です。私たちがTOEICの問題集を購入するのではなく、外国の彼らに「How to use “Japanese English”」というタイトルの本を購入させて、私たちの日本英語を彼らに勉強させるのです。

 そして、政府が行うべきグローバル化とは、文部科学省と外務省のタッグチームによる、この「日本英語」の海外への発信と宣言です。

 何より、一番大切なことは、私たちのマインドセットです。皆さん、臆することなく、日本英語でしゃべり、日本英語で文章を書きましょう。

 会話の最初や文章の最初は、以下のようになります。

This is not broken English, but Japanese English.
(これはブロークン英語ではありません。日本英語です)

 最近、私は自分のホームページで、この日本英語を使った日記の掲載を開始しております。ぜひご一読ください(日記はこちらから)驚き、あきれ、冷笑し、爆笑してやってください。そして、なにより、安心してください。皆さんが心配されるような「日本英語」に対する軽蔑や失笑は、この私が、最前線で一手に引き受けます。

 私は、この日本英語を使って、ブログやツイッターで皆さんの思いを、世界に発信していただきたいのです。

 このような声は、「大きい」あるいは「多い」方が往々にして「強い」ものです。非英語圏の中でも、特に日本という極東の国から、英語の“ように見える”メッセージが毎日怒涛(どとう)のように発信されている、という状況になれば、世界はいろいろな意味で我が国を無視することができなくなる……んじゃないかなー、と思っています。


 次回、ついに私たちは、日本に帰ります。

 私たちの意図とは別に、始まってしまい、そして広がってしまった海外共同プロジェクトという大風呂敷を、どのように短時間に完結にたたんで日本に逃げ帰るか、という観点から、あえて「帰国編」とは呼ばず、「撤収編」と銘打ち、お話したいと思います。


本連載は、毎月1回公開予定です。アイティメディアIDの登録会員の皆さまは、下記のリンクから、公開時にメールでお知らせする「連載アラート」に登録できます。


Profile

江端智一(えばた ともいち) @Tomoichi_Ebata

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「江端さんのホームページ」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。



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