ニュアンス コミュニケーションズ(以下、ニュアンス)は、車載分野に向けた事業戦略について記者説明会を開催した。コアとなる音声認識や音声合成の技術をベースに、アプリケーションや開発環境、サービスまでトータルで提供している。車載システムに最適化された音声インタフェースを採用することで、運転中であってもより安全に、さまざまな情報やサービスを受けることが可能となる。
ニュアンス コミュニケーションズ(以下、ニュアンス)は2014年3月17日、車載分野に向けた事業戦略について、東京都内で記者説明会を開催した。同社は、コアとなる音声認識や音声合成の技術をベースに、アプリケーションや開発環境、サービスまでトータルで提供している。車載システムに最適化された音声インタフェースを採用することで、運転中であってもより安全に、さまざまな情報やサービスを受けることが可能となる。
自動車業界では、インターネットに常時接続されたコネクテッドカーの動向が注目されている。自動車が通信機能を備えることで、緊急時の自動通報など安全性と安心感の向上につながる機能の実現や、交通情報や電子メール、天気予報など快適性の向上に向けた情報やサービスの提供が可能となる。ただ、運転中にこうしたさまざまな情報やサービスを受けようとすると、運転に集中できなくなるため、機器を安全に操作するのが課題となっていた。
ニュアンスの日本法人でオートモーティブプリンシパルマーケティングマネージャを務める村上久幸氏は、「解決方法の1つとして、当社は音声認識や音声合成の技術をベースに、直感的に機器の操作が可能な車載向けユーザーインタフェースを提供している」と話す。音声を認識・合成する技術に加えて、ノイズやエコーをキャンセルする音声信号処理技術、音声を補完するためのテキスト入力技術の4つがコア技術となる。また、システム開発を効率よく行うためのアプリケーションソフトウェアや技術基盤(プラットフォーム)「Dragon Drive」も用意した。さらに、設計開発やコンサルティングなどのプロフェッショナルサービスも提供している。しかも、音声認識・合成は、英語や日本語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語など、世界中の主要な言語に対応している。
ニュアンスが、車載向け音声インタフェース事業を拡大していく上でカギを握るのが技術基盤となる「Dragon Drive」である。Dragon Driveは、自然な音声で機器との対話を実現するための「Dragon Drive Speech」、車載機器と携帯電話機、ヘッドセットなどの接続を管理する「Dragon Drive Link」、車載機器にコンテンツを提供するための「Dragon Drive Connect」と3つの要素で構成されている。さらに、ビッグデータとしてデータ通信量やアクセス指向、コンテンツ利用度などを集計して活用するビジネスインテリジェント機能も提供している。
また、村上氏はDragon Driveの採用事例として、トヨタのレクサスに搭載された「Enform」を挙げた。これにより、「スマートフォン向けに用意されたアプリケーションを車載システムで利用することが可能になった」という。さらに、「工場出荷時の導入が可能で、車両固有の機能を組み込むことができる。バージョンの管理が容易である。サードパーティのアプリケーションと分離されており、仕様変更などもDragon Drive側で吸収することができる」など、Dragon Driveを採用するメリットを語る。
ニュアンスのDragon Driveは、パネルタッチやダイヤル操作なしに、音声でテキストメッセージやメールの作成、目的地やデータの検索、ルート案内などの操作、天気予報の確認などを行うことができる。既にトヨタを始めアウディやBMW、ダイムラーなど世界的な自動車メーカーが採用している。パナソニックはスマートテレビに採用している。
ニュアンスのオートモーティブビジネスユニットのマーケティングディレクタを務めるFatima Vital氏は、「音声機能を備えた新車の販売台数は2013年で2800万台に達している」という。さらに、ニュアンスのモバイルエンジニアリング シニアバイスプレジデントを務めるStefan Ortmanns氏は、「日本語の認識や自然言語との対話における性能改善やアジア言語のサポート強化に引き続き努力していきたい」と語った。
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