ウェアラブル事業を展開する上で、同社の強みとなるのが「センサー技術」や「マイクロディスプレイ技術」そして「省・小・精の技術」である。例えば、半導体技術や水晶デバイス技術をベースに開発した精度の高いセンサー製品として、モーションセンサーやバイタルセンサー、ポジションセンサーなどを用意している。マイクロディスプレイ技術では、プロジェクタで培った光学設計技術や、高温ポリシリコンTFT技術に強みを持つ。そして、ウェアラブル機器の機能や性能と同時に、機器のデザイン性や装着性を高める「省・小・精の技術」である。さらに、2011年よりプリンタ分野で導入した「Epson Connect」では、クラウドを活用したビジネスを展開している。これらのコア技術を融合してウェアラブル事業に取り組む。
既にエプソンでは、「健康・医療分野」、「スポーツ分野」および「ビジュアルコミュニケーション分野」に向けたウェアラブル機器を発表している。例えば、生活習慣改善プログラムを支援するための脈拍計、ランナー向けのGPS機器「GPS Sports Monitor」、ゴルファー向けのスイング解析システム「M-Tracer For Golf」、周囲の状況を確認しつつ映像やデータを表示させることができるスマートグラス「MOVERIO BT-200」などである。
エプソンの社長を務める碓井稔氏は、「他社製品では検出できないようなデータでも、当社のセンシング技術を用いれば精度よく測定することが可能となる。しかも優れた性能や機能だけでなく、消費者がエプソン製品を装着していることで誇らしく感じる製品、使いたくなる製品を開発して供給していきたい」と話す。
調査会社によれば、ウェアラブル機器(活動量計、GPS機器、心拍計、スマートウオッチ、スマートグラスなど)の出荷予測は、全世界で2013年の約4000万台に対して、2016年には約9000万台と予測されており、3年で倍増する見通しだ。
これに対して同社は、「健康・医療分野」、「スポーツ分野」および「ビジュアルコミュニケーション分野」に対して、新しい文化の創出に向けた製品開発やシステム開発などの取り組みを強化する。特に、新しい用途の開発や、提供する情報をより価値の高いものにするために、サードパーティーや専門アドバイザーとの連携も強めていく考えだ。碓井氏は、「ウェアラブル機器のユーザーはコンスーマだけではなく産業用途も対象となる。次期中期計画の早い時期に、まずは100億円の事業規模とし、収支をトントンにしたい」と話す。
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