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» 2015年10月22日 11時30分 公開

ダイエットの目的は…… 結局、ダイエット!?世界を「数字」で回してみよう(21) ダイエット(7/7 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]
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(付録)後輩のレビュー

 「あのね、江端さん。締切当日にレビューとか、ムチャな依頼やめてもらえませんか

 後輩の第一声は、私への不平不満から始まりました。

 この「無礼な後輩シリーズ」は、既にEE TImes Japan編集部においても、(また、一部の読者の間でも)評価されているようで、私は愉快ではありませんが、仕方がありません。

 「ま、それはさておき」、と彼は続けて言いました。

後輩:「これは、私の嫁とも議論したのですが、はっきり言って『分からん』ですよ。条件付き確率とか、ベイズ推論とか、分かる訳ないですよ」

江端:「うっ……、やっぱりそうかな」

後輩:「江端さんは、週末に、“スモールデータ”(=34人のアンケート結果)、インターネットのデータや、統計学や数理学の教科書やツールと格闘しながら、この結果を導き出したのですよね。たった一人で。その点においては、同じ研究員として心から尊敬しています

江端:「・・・」(何か気持ち悪いな)

後輩:「でもね、実際のところ、『ダイエットのためにダイエット』している、なんてことは、みんな気がついていますよ。『今さら何言ってんだ』てなもんですよ」

江端:「・・・」(そら来た!)

後輩:「みんな、『ダイエットのためにダイエット』で、十分に幸せになっているからですよ。目的を達成しなくても、幸せになれるものなんて、そうそうこの世の中にはないですよ。理由を突き詰めて、自ら不幸になる必要はないでしょ?」

江端:「『ダイエットの理由を求めると不幸になる』……のか?」

後輩:「『現実を直視しないことで、幸せになれる』って、江端さんが教えてくれたじゃないですか」

江端:「そんなこと言ったっけ?」

後輩:「“『自分の英語はイケてる』と思う込むためには、まず『TOEICを受験しない』ことだ”って(TOEICを斬る(前編) 〜悪魔のような試験は、誰が生み出したのか〜)」

江端:「おい、ちょっと、お前。研究所中棟の裏庭に来いやぁ」

後輩:「まあ、聞いてください、江端さん。今の日本のダイエット市場は2兆円産業です。子どもや高齢者を除いて、ざっくり1億人程度をターゲットとして、(ダイエットをしてない人も含めて)国民全員が、ダイエットのために年間2万円支払っていることになるのです」

江端:「2万円……」

後輩:「はっきり言いましょうか。その金、たった1年分で、日本の原発を全部廃炉にできますよ(電力という不思議なインフラ(後編)〜原発を捨てられない理由〜)」

江端:「あ!」

後輩:「その2兆円で、一体、この国の国民のぜい肉がどれほど落ちたと言えますかね? 私は『費用対効果ゼロ』と言い切ってもいいと思いますよ

江端:「じゃあ、一体何のために……」

後輩:「だから、それを今回、江端さんが仮説と数字で追い込んだのでしょ?」

 後輩は笑いながら、最後にこう付け加えました。

――『費用対効果が見込めない商品に、マネーがつぎ込まれ続けて、勝手に回り続ける』なんてビジネスは、法人税や消費税を徴収する国から見れば、「濡れ手で粟」のオイシイ事業でしょうね

――そう考えると、消費者庁などが『効果が定量的に示されていないダイエット本』に対して行政指導をしないのは当然です

――『効果がないのは、読者が勝手に挫折したからです』と言えば十分ですから


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Profile

江端智一(えばた ともいち)

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。


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