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「災害対応力」のある通信システムの実現へ、NECがコグニティブ無線向け新技術を開発無線通信技術 コグニティブ無線

NECのグリーンプラットフォーム研究所は、災害発生時の無線通信システムに適したコグニティブ無線向け新技術を開発した。空いている周波数帯域を探し出して活用したり、さまざまな無線通信方式に柔軟に対応して相互に接続するといった堅牢(けんろう)性のあるシステムの実現を目指したものだ。

» 2012年04月20日 15時45分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 NECのグリーンプラットフォーム研究所は、30M〜2.4GHzと幅広い周波数を1チップで受信可能なコグニティブ無線用高周波(RF)回路を開発した。30M〜2.4GHzの範囲で任意周波数の高周波信号のみを取り出す高性能フィルタを実現するとともに、空き周波数をきめ細かく見つけ出すための電力検出回路を搭載したことが特徴である。

 30M〜2.4GHの周波数帯域は、警察、消防、防災向けの公共業務用無線や無線LANといったさまざまな無線通信システムに使われている。これまでは、それぞれの無線通信方式ごとに受信回路を用意する必要があったが、今回開発したRF回路を使えば、すべての無線通信方式に対応しつつ、小型かつ低消費電力な無線通信システムを実現できる可能性がある。

図 災害時の無線通信システムに求められる2つの要求 出典:NEC

「臨機応変」な無線通信システム

 コグニティブ無線とは、周囲の無線環境を認識して空いた周波数を利用することで、効率的な通信を実現する無線技術である。災害時の無線通信システムの障害や将来的な周波数資源の枯渇を解決する手段として注目されている。

 例えば、災害発生時の無線通信システムには、空いている周波数帯域を探し出して活用したり、さまざまな無線通信方式に柔軟に対応して相互に接続するといった「災害対応力」が求められる。コグニティブ無線を実現できれば、このような要求に応えることが可能だ。しかし、コグニティブ無線の受信回路には、(1)なるべく広い周波数帯に対応する必要がある、(2)きめ細かく周辺環境の電界強度を読み取る必要があるといった技術的な課題があった。

コグニティブ無線の受信回路では、より広い周波数範囲に対応しつつ、きめ細かく周辺環境の電界強度を求める必要がある(左)。NEC グリーンプラットフォーム研究所が開発した高周波(RF)回路の構成(右)。RFフィルタや低雑音アンプ、ミキサー、電力検出器を集積している。出典:NEC (クリックで拡大します)

「スケーラブル」な高性能フィルタと電力検出器を開発

 NECが開発したRF回路は上記の2つの課題の解決を目指したものだ。無線通信の受信回路に必要な、低雑音アンプ(LNA)、RFフィルタ、ミキサー、利得可変アンプ(PGA)、電力検出回路などを集積している。

 まず狙った周波数のみを取り出す高性能フィルタについては、低域通過フィルタ(LPF)とある特定の帯域だけを減衰させるノッチフィルタをうまく組み合わせることで、狙った周波数以外を鋭く減衰させるフィルタ特性を実現した。しかも、フィルタ特性を可変し、スケーラブルに混信を除去することもできる。これを同社は、「周波数スケーラブル混信除去技術」と読んでいる。

今回開発した高性能フィルタの実現手法の概要。フィルタの周波数特性を変えられ、狙った周波数だけを取り出す鋭い減衰特性が特徴。出典:NEC (クリックで拡大します)

従来のフィルタ回路には、チップ面積が大きくなってしまったり、狙った周波数帯だけをフィルタリングできないといった課題があったという。出典:NEC (クリックで拡大します)

 次に、空き周波数をきめ細かく見つけ出すための電力検出回路については、ダイナミックレンジを可変し、検出器への入力が小さい領域と大きい領域のそれぞれに適したダイナミックレンジに調整する新機能を搭載した。受信可能な周波数帯域幅は0.2M〜30MHz。消費電流は25〜37mA、電源電圧は1.2Vである。90nmのCMOSプロセスで製造した。

左は開発した電力検出器の概要、右は従来の電力検出器の課題。出典:NEC (クリックで拡大します)

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