量子ドット(Quantum Dot)を利用したバックライト技術を手掛けるNanosysは、有機ELディスプレイ並みの画質を備えた液晶ディスプレイ技術の商品化に向け、3Mと共同研究を進めている。
液晶ディスプレイ(LCD)向けバックライトの研究開発を手掛ける米国のベンチャー企業Nanosysは、独自のQDEF(Quantum Dot Enhancement Film)を用いたカラー液晶ディスプレイ技術の商品化に向け、3Mの光学システム部門と共同研究を進めている。商品化に成功すれば、有機ELディスプレイ(OLED)に匹敵する画質を備え、エネルギー効率に優れた液晶ディスプレイを低コストで製造できるようになるという。
QDEFは差し込み式のフィルムで、液晶ディスプレイメーカーの既存の生産プロセスに統合することが可能だ。量子ドット(Quantum Dot)の発光特性により、液晶ディスプレイ用のバックライトとして用いることができる。
2012年6月3〜8日に米国マサチューセッツ州ボストンで開催されている「Society for Information Display(SID 2012)」の会場で、3Mの光学システム部門バイスプレジデントであるJim Bauman氏は、「Nanosysが持つ世界トップレベルのバックライト関連技術および専門知識と、3Mの強みであるエンジニアリング、設計、サプライチェーンが融合すれば、視聴者の視覚に強く訴えるようなカラー映像を新たに実現することができる」と語った。
Nanosysのプレジデント兼CEO(最高経営責任者)であるJason Hartlove氏は、「われわれは、過去10年間で大きく見過ごされてきた画面性能の改善を目指して共同開発を行っている。設計やサプライチェーンといった3Mの強みを活用することで、NanosysのQDEF技術は、あらゆる製品分野において幅広く導入されるようになるだろう」と述べた。
量子ドットは極めて正確な波長で光を発する。QDEFは量子ドットのスペクトル出力を制御する性能を備えているため、特に液晶ディスプレイ向けの理想的な白色バックライトとして用いることが可能になる。液晶ディスプレイのバックライトユニットに統合されたフィルムには、数兆個もの量子ドットが封止されている。QDEFは、既存の液晶ディスプレイ用バックライトに用いられているフィルムの代替品として使用できる。つまり、液晶ディスプレイメーカーは、新たな製造装置を導入したり、製造プロセスを変えたりすることなく、QDEFを既存の製造プロセスに追加できることになる。
このQDEFの技術が評価され、Nanosysは今回のSIDで「Display Industry Awards Gold Display Component of the Year」を受賞した。
【翻訳:清藤康司、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.