「450mmウエハーへの移行を支援しなければ、欧州の半導体製造分野は衰退が進む」――。市場調査会社がこのようなリポートを発表し、欧州に450mmウエハーに対応した製造施設を建設することの重要性を説いた。
欧州委員会(EC:European Commission)に最近提出されたリポートでは、欧州の半導体メーカーによる450mmウエハーの試作製造ラインの構築や、“More than Moore(ムーアの法則を超える)”のプロセスを用いて同サイズのウエハーを量産する製造施設の実現において、欧州各国が担う潜在的な役割を考察している。
「Benefits and measures to set up 450 mm semiconductor prototyping and to keep semiconductor manufacturing in Europe. The role of public authorities and programmes(450mm半導体の試作製造ラインの構築とヨーロッパにおける半導体製造の維持の利益と対策。当局と公的プログラムの役割)」というタイトルのこのリポートは、2011年1月から2012年2月にかけて、市場調査会社である英国のFuture HorizonsとフランスのDecisionが行った調査をまとめたものである。
この調査の目的は、高性能半導体製造分野における研究とイノベーションへの支援に不可欠な取り組みや、欧州でのナノエレクトロニクス製造への支援に向けた対策について見定めることである。さまざまなシナリオを分析しているが、仮に「支援を全く行わなかった」場合は、「欧州における半導体製造と価値創造の衰退はさらに進む」と結論付けている。
リポートでは、各国および欧州全体のレベルで実施可能な5年間の支援プログラムを提案している。450mmウエハーの試作製造ラインの構築をサポートし、欧州の部品/材料サプライヤが450mmウエハーに移行する動きを後押ししようというものだ。米国主導のコンソーシアム「Global 450 Consortium(G450C)」との連携なども含まれている。
さらに、More than Mooreのプロセスを適用したICの量産に対応する450mmウエハーの製造施設「EuroFab450」を、できれば欧州のIDM(垂直統合型のデバイスメーカー)が共同で運営するというビジネスモデルも提示している。
リポートは、「More than Mooreのような最先端のICの生産を目指し、欧州に450mmウエハーの製造施設を建設することの有益性は、上記のような支援プログラムの実施により、さらに高まるだろう」としている。
Future HorizonsでCEO(最高経営責任者)を務めるMalcolm Penn氏は、報道発表資料の中で、「製造施設の数を増やさずに、ウエハーの生産能力を毎年10%ずつ向上するには、450mmウエハーへの移行が不可欠になる。450mmウエハー製造施設の生産能力は、300mmウエハー製造施設に比べて2.25倍ほど高いからだ。また、450mmウエハーへの移行は、ウエハーの製造コストを30%削減するとみられており、300mmウエハーに対する競争優位性も高まることになる」と述べた。
当初、Future HorizonsとDecisionに調査が委託されたころは、欧州の半導体業界では450mmウエハーへの移行に関して懐疑的な意見もあったという。だがその後、IntelやSamsung Electronics、TSMCが最先端のウエハー製造施設に450mmウエハーに対応した製造技術を導入する計画を表明したことや、GLOBALFOUNDRIESとIBMがG450Cを設立した直後に、Samsungが同コンソーシアムに参加したことなどから、調査が終了するころには、そうした懐疑的な見方も徐々に変わっていったという。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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