無線通信市場で確固たる地位を築こうとさまざまな戦略を図ってきたIntelが、無線技術の特許を3億7500万米ドルで買収するという。今回の特許買収により、同社は、スマートフォンやタブレット端末市場における影響力を高めるとみられている。
Intelは2012年6月18日、知的所有権(IP)の開発を手掛けるInterDigital Communicationsが所有する、無線通信分野の主要技術に関連する約1700件の特許および特許出願を買収することに合意したと発表した。
報道発表資料によると、Intelは、InterDigitalが所有する3G(第3世代)、LTE(Long Term Evolution)、およびIEEE 802.11に関わる特許の買収に3億7500万米ドルを投じるという。同資料の中でInterDigitalは、自らを「WCDMA、HSDPA、HSUPA、LTE、LTE-Advancedなど、3G/4G(第4世代)の高度な無線技術の開発に積極的に取り組む企業」と称している。
*)WCDMA:Wideband CDMA
HSDPA:High Speed Download Packet Access
HSUPA:High Speed Upload Packet Access
Intelによる特許買収により、InterDigitalはそのビジネスモデルに一定の評価を得た他、新たに得た現金資金を無線通信以外の市場分野の研究開発に投資できるようになった。Intelへの特許売却が報道された後、InterDigitalの株価は、6月15日(金曜日)の終値22.88米ドルから約30%上昇して29.40米ドルとなり、時価総額は13億米ドルに達した。InterDigitalでシニアエグゼクティブバイスプレジデントを務めるScott McQuilkin氏は、報道発表資料の中で、「今回の取引は、事業拡大に向けた戦略の一環である」と述べた。
InterDigitalは以前、事業そのものの売却を検討していたが、売り上げの不振や収益の悪化により、売却先の確保に失敗した。そこで同社は、資産のばら売りを含む戦略に転換したが、今回のIntelによる特許買収は、そうした新しい方針が功を奏したと言えるだろう。InterDigitalは売却できるIPをまだ所有しており、Intelが今回獲得する資産は、「当社の特許ポートフォリオ全体のごく一部である」とMcQuilkin氏は述べた。
Intelは、無線通信市場で強固な地位を築くため、無線関連事業やIPの買収に巨額の資金を投じてきた。そうして蓄積した資産は、今回の取引でさらに拡大することになる。Intelは、今回の特許買収により、スマートフォンやタブレット端末市場での支配力を強めるとみられる。Intelは長年、こうした分野の強化を図ってきたが、これまでの成功事例は、最近、複数の携帯電話機メーカーからデザインウィンを獲得したことだけだった。
IntelのシニアバイスプレジデントであるDoug Melamed氏は、「InterDigitalから買収する特許は、Intelのモバイル機器分野における戦略的投資を後押しする。当社が所有する膨大かつ多様性に富んだIPポートフォリオは、これらの特許が加わることで、より一層拡大することになるだろう」と語った。
【翻訳:平塚弥生、編集:EE Times Japan】
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