Intelの14nmプロセスの導入が遅れる可能性が出てきた。14nmチップを製造するためのトレーニングを米国で受けていたアイルランド工場に所属する600人の従業員が、予定よりも早く帰国している。一方、ファウンドリ専業のGLOBALFOUNDRIESは、14nmプロセスについて強気のロードマップを発表している。
Irish Times紙は2012年11月9日、Intelが、米国で実施している製造トレーニングから、同社のアイルランド工場に所属する600人の従業員を予定より早く帰国させていると報じた。
彼らにとって、早く帰国できるのは喜ばしいことかもしれない。しかし、帰国が早まった理由がプロジェクトが延期されたためであるならば、それほど喜んでもいられないだろう。
Intelは、アイルランドのダブリン近郊のLeixlipにある「Fab 24」において、「P1272(コードネーム)」と呼ぶ14nmプロセスの導入を予定していた。しかし、同社はこの計画を延期することを決定し、予定を切り上げて従業員を帰国させているという。
Fab 24の従業員は、Leixlipへの14nmプロセスの導入に向けて、14nmの製造設備のトレーニングを受けていた。Intelは2012年初めに、米国オレゴン州の「D1X」とアリゾナ州の「Fab 42」に加え、Fab 24にも14nmプロセスを導入すると発表している。同社は、Fab 24に10億米ドルを超える設備投資を行うとされているが、これは、次世代プロセスに対応した製造施設をアイルランドにも整備することで、「ムーアの法則」を少なくともあと1世代は継続するためだとみられる。
Irish Times紙は、アイルランドでの14nmプロセスによる生産開始が6カ月延期され、2013年末にずれ込んだと報じている。延期の原因は、技術的な問題ではなく需要の低迷だという。しかし今回の報道によって、Intelがアイルランドでの14nmプロセス導入を進めるべきかどうか、検討し直しているのではないかという懸念が持ち上がっている。
Intelがアイルランドのファブに最先端のプロセスを導入しないとなれば、欧州全体に動揺を引き起こす可能性もある。Intelは欧州で4500人の技術者を雇用しており、同地域の民間企業では最大規模だからだ。
欧州連合(EU)は、アイルランドへのIntelの誘致を後押ししたと言われている。EUは、ナノエレクトロニクスを実現技術のカギと捉えており、ナノエレクトロニクス産業が欧州から撤退してしまうことを懸念しているようだ。ただし、欧州でナノエレクトロニクス技術を所有しているのは、IntelやGLOBALFOUNDRIESのような海外企業である。
やはりここでも、半導体製造技術でIntelと競うGLOBALFOUNDRIESの名前が挙がってくる。
興味深いのは、Intelの14nmプロセス技術は、同社にとって、3次元構造のFinFET技術を適用したプロセス世代としては2番目になる点だ(1番目は22nm世代)。一方、GLOBALFOUNDRIESの「14XM(eXtreme Mobility)」プロセスは、平面トランジスタに代えてFinFETを導入するが、基本的に20nmプロセス技術をベースにしたものとなっている(関連記事:GLOBALFOUNDRIES、2014年に14nm世代のFinFETプロセス投入へ)。そのため、20nmプロセスの平面トランジスタに比べてダイサイズはそれほど変わらないとみられている。
つまり、2014年に生産開始を予定しているGLOBALFOUNDRIESの14XMは、製造コスト削減に大きく貢献するダイサイズの縮小をせずに、プロセス世代を進める最初の事例となる。
一方、2013年に生産開始を予定しているIntelのP1272は、1世代前の22nmプロセスの「P1270」からダイサイズを縮小しており、消費電力も削減していると思われる。
もしIntelが、14nmプロセスのP1272を適用したチップを投入できれば(しかも複数のファブで製造できれば)、Intelはこれまで築き上げてきた地位を維持することができるだろう。反対に、P1272の投入が遅れれば、最先端を行く半導体メーカーとしての名声を失うことにもなりかねない。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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