Microsoftのアプリケーション実行環境である「WinRT(Windows Runtime)」は、ARMベースのタブレット端末向けに開発されたものだ。しかし、現時点ではWinRTは苦境に陥っている。ユーザーからは、「基本的な要素である電子メールクライアント『Outlook』や、クラウドストレージサービスに関する堅固なサポートなどが欠けている」と指摘されている。
こうした基本要素に関する問題が解決しない限り、ARM版Windowsがタブレット端末において主流になることはないだろう。また、Microsoftがタブレット端末でWinRTの成功を実現できなければ、ノートPCやデスクトップPCをはじめとする他の分野にWinRTを拡大することは難しい。
クライアントコンピュータとしては、ノートPCとデスクトップPCはもはや過去のものになりつつある。今後は、スマートフォンとタブレット端末がPCに取って代わるのは明らかだ。それにもかかわらず、ノートPCとデスクトップPCの市場規模は、今後数年の間、数億台規模を維持するとみられている。つまり、ARMが今後対応すべき成長市場だといえる。
ARMは、Intelが推進する「Ultrabook」の競合品となるようなノートPCのコンセプトをサポートすることで、Microsoftに対して、売上高増加のチャンスを示す必要がある。こうした取り組みで最適なパートナー企業となるのが、NVIDIAとQualcommだろう。両社とも今後の成長市場として、フルキーボードと大容量バッテリを搭載し、周辺機能をより統合したハイエンドなタブレット端末に注目しているからだ。
また、ソフトウェア関連では、GoogleやMozilla、Ubuntuが最適なパートナーとなるだろう。ARMは、これらのOS(Androidを含む)でWindowsの置き換えを狙うくらい、積極的に推進していくべきだ。これは結局、Microsoftの注意を引き付けることにもなるのである。
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【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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