偽装チップの問題が深刻化している。安価な半導体チップだけでなく、高価なチップにも不正品が紛れ込んでいるという。米国防高等研究計画局(DARPA)は、偽装品を見つけ出すべく、100μm角の超小型部品の開発プログラムを発表した。
エレクトロニクス業界はこれまで、偽装部品を見抜くために、マーキングからX線を用いた検査に至るまでさまざまな手法を取り入れてきた。米国防高等研究計画局(DARPA)は今回、こうした問題への対応を進めるため、「SHIELD(Supply chain Hardware Integrity for ELectronics Defense)」プログラムを発表した。
DARPAはこのプログラムの中で、100μm角の「dielet」と呼ばれる超小型部品の開発を要請している。
dieletは、電子部品の出所を確認できるようにするもの。暗号化エンジンとセンサーを搭載し、偽装チップを検知することを目指す。製造時に、チップとdieletを同一パッケージに封入することを想定している。dieletとチップは、電気的に接続されている必要はない。dieletをプローブでスキャンすることで、チップが偽装されている可能性があるかどうかを判断するという。
DARPAは、dieletの開発が成功すれば、以下のような偽装部品/不正部品をほぼ100%の確率で見つけ出せるようになるとしている。
現在、軍事分野のサプライチェーンにも、不正な部品が数多く流れ込んでいる。非常に安価なチップだけでなく、高価なチップにまで偽造/偽装部品が紛れ込んでいるという。こうした不正な部品が原因となってシステム障害が発生すれば、軍事活動に支障をきたすだけでなく、人命が失われる危険性もある。
米国の上院軍事委員会(Senate Armed Services Committee)が2012年5月に発表したリポートによれば、既存のサプライチェーンにおいて、2009年と2010年だけで1800件以上の押収が行われ、100万個の不正な部品が見つかっている。こうした部品の多くは、中国が供給元になっているという。同委員会がサプライチェーン経由で追跡調査を行った結果、不正な部品の70%以上が中国から来ていることが明らかになった。
DARPAは、今回発表したSHIELDプログラムの中で、機器を損傷することなく、保護された電子部品であるかどうかを検査することが可能なツールの開発を要請している。DARPAでプログラムマネージャを務めるKerry Bernstein氏は、プレスリリースの中で「SHIELDプログラムでは、dieletの製造コストを1個当たり1米セント未満に抑えることを目指す。偽造品を製造する方がかえって難しく、コストも高くなるようにするためだ。また、dieletは、動作時の信頼性は高いが、改ざんしようとすると簡単に壊れるものでなくてはならない。SHIELDは、最先端のハードウェア技術を導入することにより、これまでのサプライチェーンには存在しなかった、オンデマンドの認証処理を実現することを目指していく」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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