TSMCが、Apple向けにモバイルプロセッサの出荷を開始していたと米報道機関が報じている。Appleの次世代スマートフォン「iPhone 6」に搭載されるとみられている。
The Wall Street Journalは2014年7月10日(米国時間)、TSMCが、2014年第2四半期にApple製品向けにモバイルプロセッサの出荷を開始していたと報じた。両社の提携関係は、2015年まで続く見通しだという。
米国の市場調査会社であるInsight64で主席アナリストを務めるNathan Brookwood氏によると、「Appleは、同社の全てのサプライヤに秘密厳守を要求している」という。同氏は、「この1年間、Appleは『iPhone 6』に搭載する次世代プロセッサの発注先をTSMCに変えるのではないかと度々うわさされていた。iPhone 6は、2014年9月に発売されるとみられている」と述べている。
今回の報道に対して、AppleとTSMCの両社は公式なコメントを発表していない。だが、TSMCは2013年にAppleとプロセッサの製造契約を結んだと報じられている(関連記事:TSMC、次世代Aシリーズの製造でAppleと契約か)。当面は20nmのプレーナ型CMOSプロセスを適用した製品を提供し、ゆくゆくは16nmおよび10nmのFinFETプロセスも適用するとされている。これまで、Appleにモバイル向けSoCを提供していたのは、同社最大のライバルであるSamsung Electronicsだけだった。Appleは、iPhoneと「iPad」の特許を侵害したとして、Samsungを提訴していた(関連記事:アップルとサムスンの特許訴訟、結局はケンカ両成敗!?)。
アナリストらは、TSMCがAppleに対する本格的な出荷を始めたという報道に驚いてはいない。Brookwood氏は、「Appleがプロセッサの発注先をTSMCに移行しようとしている背景には、Samsungとの対立関係がある」と指摘する。一方、アナリストのPeter Glaskowsky氏は、「AppleがTSMCと提携したのは、単に、サプライチェーンを確保するためだ」と述べる。
Glaskowsky氏は、EE Timesに対して、「Appleにとって、地震や洪水などの災害発生時にも大量のチップを安定して調達できるように、Samsungに代わるサプライヤを確保することが重要だった。TSMCとSamsungは両社とも、ティア1の半導体メーカーであり、電力効率とエネルギー効率に優れた製品を提供できる」と述べている。
AppleがTSMC以外のファウンドリを利用する可能性もある。GLOBALFOUNDRIESはSamsungからライセンス供与を受けて、2015年に14nm FinFETプロセスチップの製造を開始する。つまり、TSMCの他にも、Apple製品向けに最適化されたチップを供給できるファウンドリがあるということだ。Appleは1年〜1年半のサイクルで新製品を開発し、短い期間に大量生産する。こうした生産スタイルには、複数のサプライヤの確保が不可欠だ。
Brookwood氏は、「2015年に発売されるiPhone 6の後継機種に、FinFETプロセスを適用したGLOBALFOUNDRIES製のチップが搭載される可能性は大いにある」と述べている。
ただし、Appleがチップの発注先を複数のファウンドリに分けるのか、これまでのように1社に絞るのかは、現時点では定かではない。「TSMCが、Appleのサプライヤとしてどこまでできるかによるのではないか。高性能かつ高効率のチップをTSMCがAppleに提供できれば、TSMCが製造するApple向けのチップの量はおのずと増えていくだろう」(Glaskowsky氏)。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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