日立製作所は、今回開発した「高速計算を可能とするイジング計算アーキテクチャ」と「CMOSアニーリング技術」、および65nmの半導体プロセス技術を用いて、2万480パラメータを入力可能なコンピュータを試作した。試作機で実証実験を行った結果、システムが室温で動作することを実証するとともに、2万480パラメータの大規模組み合わせ最適化問題を、わずか数ミリ秒で解けることを確認した。パラメータ数は現行の量子コンピュータの40倍となる。また、従来コンピュータを使った場合に比べて、電力効率は約1800倍に改善されることも確認した。さらに、14nmプロセス技術を用いると、1600万パラメータに対応できるチップも実現可能だという。
組み合わせ最適化問題とは、大規模かつ複雑化する社会システムの課題を解決するために、最適な組み合わせを見出すための手法として注目されている。例えば、都市部における交通渋滞の解消や、電力送電網による安定したエネルギー供給、グローバルサプライチェーンにおける物流コストの最小化、などを実現するために、膨大な組み合わせ(パターン)の中から、最適な解(組み合わせやその順序)を算出し、実社会に適応させていくことを目的としている。
現在は最適化問題を解く手法として、量子アニーリングと呼ばれる量子力学を応用した計算手法を使った量子コンピュータが提案されている。問題解決に当たっては、磁性体の振る舞い(物理現象)を数学的に表現する「イジングモデル」に変換して処理が行われる。しかし、量子コンピュータだと、動作環境として極低温に冷却する必要があり、そのための装置が必要となる。また、量子アニーリングに超電導素子が必要なため回路を大規模化することが困難な状況となっている。日立が開発した新型コンピュータは、さらに大規模・複雑化する社会インフラの課題を解決する技術として期待される。
今回の研究成果は、半導体集積回路に関する国際学会「2015 ISSCC」(2015年2月22〜26日に米国サンフランシスコで開催)で発表された。
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