太陽光発電市場では中国メーカーとの競争が激化しており、2011年8月には米国の太陽光発電パネルメーカーであるSolyndraが倒産に追い込まれた(関連ニュース)。IMECはこうした状況の中、太陽光発電事業に強気な姿勢で臨んでいる。IMECの研究チームは、発電効率の向上やコストの低減、太陽電池と太陽光発電モジュールの製造統合に向けて、さまざまな新技術の開発に取り組んでいる。
IMECでエネルギーグループの事業開発マネジャーを務めるPhilip Pieters氏は、「太陽光発電市場でのビジネスチャンスが無くなったわけではない。中国は同市場でのシェアを拡大し、製造設備を増設しているが、その製品は基本的な技術を適用したものが中心だ。より高効率な太陽電池市場にはまだ開拓の余地がある」と述べる。
太陽光発電の市場規模は500億米ドルを上回るが、シリコン結晶系太陽電池が売上高の80%を占めている。中国はこのシリコン結晶系太陽電池で高いシェアを確保しているが、中国製品の発電効率は、IMECが目標とする値に比べて20%も低いという。
IMECは、シリコン結晶系太陽電池のコスト低減にも取り組んでいる。比較的コストの高いシリコンや銀といった材料の使用を抑え、CMOSのように銅配線を採用するといった工夫を加えている(図23)。
さらに、アジアの大手太陽電池メーカー数社も、欧州や米国にモジュール組み立て工場を建設しており、IMECが開発を手掛ける、太陽電池とパネルの製造を統合した新しい製造プロセスの導入も期待されるという。
Pieters氏は、「中国から米国や欧州へ大きくて壊れやすいパネルを出荷するのは、コスト効率が悪い」と指摘している。
IMECで太陽電池の新材料開発チームを率いるMarc Meuris氏(図24)は、「太陽電池は、今後20年間成長が見込める市場だ。メーカーにとって、新規参入の機会を生み出している」と語る。同氏は、「非シリコン系材料はコスト削減に貢献する」と続けた。
IMECの主任研究員であるFredric Dross氏(図25)は、最新のモジュール設計について説明した。製造プロセスの比較的初期の段階で、太陽電池と太陽電池向けガラスを統合するものだ。この技術を導入すれば、太陽電池を破損することなく100μm以下の薄さに加工できるという。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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