スマートフォンやタブレットPCの普及で、モバイル機器向けグラフィックスプロセッサ(GPU)の市場は拡大の一途をたどっている。その市場で他を圧倒するシェアを占めるのがImagination Technologiesだ。市場調査会社のリポートによれば、残るベンダー全てを合計したシェアを上回るという。
モバイル機器向けグラフィックスプロセッサ(GPU)コアの市場シェアは、英国のIPコアベンダーであるImagination Technologiesが群を抜いており、残るベンダー全てを合計したシェアを上回るという。市場調査会社である米国のJon Peddie Research(JPR)が、モバイル型の組み込み機器向けグラフィックス市場に関する最新のリポートで明らかにした。
JPRはこのリポートの中で、2011年におけるモバイル機器向けグラフィックスチップの出荷数量を見積もっている。同社によると、モバイル機器に組み込まれるGPUの数は増加の一途をたどっており、それらのGPUはモバイル機器が搭載するSoCタイプのアプリケーションプロセッサに集積されているという。
アプリケーションプロセッサを供給する半導体ベンダーとしては、BroadcomやIntel、Marvell、MediaTek、NVIDIA、ST-Ericson、ルネサス エレクトロニクス、Texas Instruments(TI)、Qualcomm、Samsung Electronicsなど、十数社が存在している。これらのベンダーは、GPUコアを自社で設計する垂直統合型の半導体ベンダー(IDM)と、外部から調達して自社チップに統合するベンダーのいずれかに分類することが可能だ。
垂直統合型のベンダーは、NVIDIAとQualcomm、ZiiLabsの3社である。この他のベンダーはいずれも、IPコアベンダーのARMとディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)、Imagination Technologies、Takumi、Vivanteの5社のいずれかからGPUのIPコアを購入している。
ただしJPRは、こうした明確な分類に入らない例外として、BroadcomとSamsungを挙げる。これら2社は、外部からIPコアを購入するとともに、自社でもGPUの設計を手掛けている。またAppleは、自社設計のSoCを開発しているが、他社に対してそのSoCを商用目的で販売することはない。
GPUコアを集積するアプリケーションプロセッサのベンダーとしては、AppleとTI、Qualcomm、Samsungが大手ベンダーに挙げられる(ただしAppleは、前述の通り自社の機器向けで外販はしていない)。JPRによれば、これら4社のうち3社と、その他の小規模な競合メーカー数社が、Imagination TechnologiesのGPUコアを採用しているという。
この他にもGPUコアを外部から購入しているSoCベンダーとしては、Actions SemiconductorやFreescale Semiconductor、Huawei Technologies、Ingenic Semiconductor、Rockchip、Wonder Media(VIA Technologiesの子会社)などがある。これらのSoCベンダーは、フィーチャーフォン市場に向けた製品を手掛けているほか、スマートフォン市場やタブレットPC市場にも参入し始めている。
JPRによると、2012年の市場シェアは劇的に変化する見込みだという。既存のプレーヤ企業がより積極的な戦略を展開することにより、市場における選択肢の幅が狭められる他、新たに2社のIPコアベンダーが市場への参入を予定しているためだ。
Imagination Technologiesは、同社のGPUコア「PowerVR Series6」のライセンス供与先が全部で8社あり、そのうち3社がST-EricssonとTI、ルネサス エレクトロニクス、MediaTekであることを明らかにしている。JPRはさらに、AppleとIntel、Samsungの3社も同様にImagination Technologiesからライセンス供与を受けていると独自に予想する。また、「PowerVR Series5」のライセンス供与先に関しては、パートナー企業として既存のソニーとSigma Designs、Realtekに、MStar Semiconductorとリコー、Rockchipが加わる予定だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.