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「クラウドとNFCで家電が変わる」、パナソニックがスマート家電を一挙発売ビジネスニュース 企業動向

スマートフォンの専用アプリから、冷蔵庫の扉の開閉数をチェックしたり、洗濯機に投入する洗剤・柔軟剤の適量をお気に入りの銘柄を指定して確かめたり、外出先から自宅のエアコンをオン/オフしたり……。パナソニックがクラウド経由でさまざまな機能を利用できる「スマート家電」の新製品群を発表した。

» 2012年08月21日 16時38分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]
CMキャラクターを務める吉瀬美智子さん CMキャラクターを務める吉瀬美智子さん

 「80年以上におよぶ歴史の中で、パナソニックの家電が新しい可能性を秘めた全く新しいステージに切り替わる瞬間だ」――。パナソニックは2012年8月21日、消費者がスマートフォンに搭載した専用アプリ経由で同社のクラウドサービスに接続し、さまざまな機能を利用できる家電群を「スマート家電」と呼んで市場に投入すると発表した。ルームエアコンと冷蔵庫、洗濯乾燥機、体組成計、活動量計、血圧計の6つの製品群で、2012年9月25日〜10月20日にかけて順次発売。2014年度に260万台、2000億円の売り上げを目指す。

発表会の様子 8月21日に東京都内で開催した発表会で、パナソニックの役員でアプライアンスマーケティング本部の本部長を務める中島幸男氏が説明した。

 消費者は、手持ちのスマートフォンにパナソニックが無償提供する専用アプリ「パナソニックスマートアプリ」をインストールし、購入した家電の利用者登録をすることで、同社のクラウドサーバを介した各種のスマート機能を使えるようになる。

別の部屋でも外出先でもスマホがリモコンに 専用アプリを使えば、スマートフォンが別の部屋からでも外出先からでもエアコンを操作できる“リモコン”になる。

 例えばエアコンでは、スマートフォンのアプリで外出先から遠隔で運転のオン/オフを操作したり、切り忘れを確認したりすることが可能だ。冷蔵庫については、アプリ上で扉の開閉回数を確認したり、同社の省エネ機能「エコナビ」の稼働率を確認することができ、「日々の節電意識の向上に活用できる」(同社)。洗濯機では、洗剤と柔軟剤の種類を記憶させておき、最適な洗浄効果が得られる設定を自動的に行う。ヘルスケアに向けた体組成計、活動量計、血圧計の3つの製品群については、いずれも日々の測定データを記録・管理できる機能を提供する。また、これら6つの製品群ともに、使用方法が分からない場合や、エラー表示が出た際には、取扱説明書を探さなくてもスマートフォンの画面で操作方法を確認することが可能だ。

6つの製品群を投入 6つの製品群を投入する。スマートフォンを掲げて立つのは、同社のスマート家電群のCMキャラクターを務める女優の吉瀬美智子さん。(クリックで画像を拡大)

スマホと家電はNFCでつなぐ

 ルームエアコンを除く5つの製品群については、スマートフォンとの接続に近距離の無線通信技術「NFC(Near Field Communication)」を採用した。その背景についてパナソニックの役員でアプライアンスマーケティング本部の本部長を務める中島幸男氏は、次のように説明した。

 「当社では“白物家電を変える”ことを目指し、2010年からプロジェクトを組んで、新たな提供価値を模索してきた。そこで着目したのがNFCだ。いわゆる“おサイフケータイ”の技術で、携帯電話機やスマートフォンに搭載される国際規格になっている。今後、多くのスマートフォンに搭載されて普及が加速し、誰もが使える技術になるだろう。そのNFCによって家電がインターネット経由でクラウドとつながれば、消費者に新たな価値やサービスを提供できるようになる。消費者は機器の設定やデータのやりとりといった煩わしい作業から解放され、タッチするだけの簡単な操作で済むようになる」(中島氏)。

 スマートフォンとパナソニックのクラウドサーバは、携帯電話の回線を使って接続する。すなわち同社のスマート家電は、家電自体が直接インターネットにつながるわけではなく、従ってIP(Internet Protocol)アドレスも備えていない。スマートフォンがいわば“仲介役”となってクラウドサーバと家電をつなぐ。スマートフォンと家電の間の情報のやりとりは、スマートフォンを家電のフロントパネル部に触れさせる動作で完了する。

 なおスマートフォンのうち対応するプラットフォームについては、接続技術にNFCを採用していることから、現在のところAndroid OSだけである。現在のところNCFに対応していないAppleのiOSが今後NFCに対応した場合は、「(iOS対応を)検討する」(同社)とした。

エアコンは特定小電力無線を利用

 6つの製品群のうちルームエアコンについては、接続技術にNFCではなく特定小電力無線による無線方式を採用した。そのためAndroidに加えて、Appleのスマートフォン「iPhone」の既存機種でも利用可能なアプリを提供する。

エアコンのシステム構成 エアコンのシステム構成を示した図(写真の上部)と、特定小電力無線に対応した無線アダプタ(写真の中央部・右側)および無線ゲートウェイ装置(同・右側)である。(クリックで画像を拡大)

 エアコンの室内機に無線アダプタを取り付けるとともに、消費者の宅内にあるブロードバンドルータに専用の無線ゲートウェイ装置を接続して使う。すなわち、スマートフォンとエアコンの間の接続は次のようになる。専用アプリから携帯電話の回線を経由してクラウドサーバにつなぎ、クラウドサーバから宅内ブロードバンドルータと無線ゲートウェイ、無線アダプタを介してエアコンに接続する仕組みだ。

 宅内の無線接続にWi-Fi(無線LAN)でははく特定小電力無線を採用した理由については、「3階建ての一般的な住宅でも、特定小電力無線の通信可能範囲であれば一軒全体をカバーできる。固定電話の親機と子機の無線接続にも使われていて実績があり、1台の無線ゲートウェイで最大8台を収容できることもポイントだった」(同社)と説明した。

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