Samsung Electronicsが、モバイル向けOS「Tizen」を搭載したスマートフォンを、2013年中にも発売する可能性がある。Androidで一時代を築いたSamsungだが、「Samsungが、Googleの影がつきまとうAndroidを切り離す日が来るかもしれない」とみるアナリストもいる。
Samsung Electronicsの過去数年間にわたるAndroidベースのスマートフォンでの成功を考えると、同社がその成功を捨てて、再度荒波に立ち向かうことなどあり得ないと思うかもしれない。だが、必ずしもそうとは限らないようだ。
スマートフォンの幅広い製品ポートフォリオを提供するSamsungは、現在のスマートフォン市場ではAppleの唯一にして真の競合相手である。Androidスマートフォンのおよそ40%がSamsung製だと言われている。そのSamsungが、Androidの競合として2011年に発表されたLinuxベースのモバイル用OS「Tizen」を用いたスマートフォンを販売する計画が報じられ、世間を騒がせている。同社はかねてよりTizenを支持してきた。
最近、通信社のブルームバークは、「Samsungは、Tizenを採用したハイエンドのスマートフォンを2013年8月または9月に発売する計画である」と報じた。だが、今のところ詳細は明らかになっていない。
米国の市場調査会社であるIDC(International Data Corporation)によると、2012年におけるスマートフォン向けOSのシェアは、Androidと「iOS」で90%以上を占めていた。だが、スマートフォンメーカーは、これら2つ以外により多くのOSがシェアを伸ばすことを望んでいる。その理由の1つは、Appleしか扱えないiOSを除けば唯一の選択肢となるAndroidだけでは、スマートフォンの差異化を図りにくいというものだ。もう1つの理由は、目下のところAndroidが強すぎるというものである。
Tizenを採用することは、少しずつ仕様が異なる品種を取りそろえ、幅広い製品ポートフォリオを展開するというSamsungの戦略に沿ったものかもしれない。Endpoint Technologies AssociatesのプレジデントであるRoger Kay氏は、「Samsungは自社のことを、必要な物が何でもそろっている“スーパーマーケット”のようにみているのだろう」と述べる。
Kay氏によると、SamsungがAppleに倣って、自社のスマートフォンを可能な限りコントロールをしようとしているのは間違いないという。Appleが「iPhone」と「iPad」に自社で開発したプロセッサを採用しているのと同様に、Samsungも「GALAXY」シリーズのスマートフォンの多くに、独自のプロセッサ「Exynos」を採用している。
米国の市場調査会社であるABI Researchは、現在Samsungが大量のAndroidスマートフォンを展開していることを踏まえると、同社がAndroidスマートフォンの販売をやめることはあり得ないと確信している。
ABIによると、Samsungが開発したタッチインタフェース「TouchWiz」は、AndroidだけでなくTizenやその他のOSにも対応しており、どのメーカーのスマートフォンでも一貫性のあるユーザーエクスペリエンスを実現するという。
確かに、今のところは、SamsungがAndroidから手を引くことは難しい。Appleにこれほどまでに対抗できたのは、Androidがあったからだ。だが、Kay氏は、「ゆくゆくは、そのような日が来るかもしれない」と予想している。「SamsungはAndroidを切り離し、独自路線に進む可能性はある。Androidはオープンソースだが、Samsungとしては、Googleの影がつきまとっていると感じるのかもしれない」(Kay氏)。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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