エクスプローラは、テレビ中継システムなどで採用されるレート制御機能搭載コーデック装置で2014年初めにもH.265対応製品を発売する。2014年にも開始される4K放送に備える。
エクスプローラは、テレビ中継システムなどで採用されるレート制御機能搭載コーデック装置で2014年初めにもH.265対応製品を発売する。2014年にも開始される4K放送への対応を済ませる他、無線通信など品質が保証されない通信網でも安定した映像伝送が行えるレート制御機能の利点を生かし、セキュリティカメラや民生機器分野での応用に向けた提案も実施していく。
エクスプローラは、組み込みハードウェア、ソフトウェアの受託設計製造ベンダーで、特にFPGAやDSPを使った画像、音声処理技術に強みを持つ。受託設計以外にも、一部自社ブランド製品展開も行い、今回、H.265対応を進めるレート制御機能搭載コーデック装置もその1つ。
レート制御機能とは、通信回線の混雑度に合わせて、画像圧縮率、伝送方法をリアルタイムに変えるもの。デコードを行う受信側で、画像信号のエラー率などを検知し、その情報を送信側にフィードバックして、エンコードを行う送信側が画像圧縮率、伝送方法を制御する仕組みだ。
このレート制御機能が効果を発揮するのは、通信帯域が変動する無線通信やインターネット回線などの通信回線で、途切れることなく画像伝送する用途だ。言い換えれば、通信帯域が保証される専用回線以外の通信回線で映像を伝送する用途に有効な技術と言える。
マラソン中継などで使用されるテレビの移動中継システムでは、移動中継側と放送局側を無線で結ぶ。テレビ放送の場合、映像が遮断されることは許されないため、従来は、通信状況が悪化した場合でも、一定の帯域が確保できる広い帯域の無線回線を使う必要がある。広い帯域の回線が確保できない場合には、あらかじめ伝送する映像のデータ量を落とし、低解像度で途切れない放送を実現していた。
これに対し、レート制御機能を使えば、通信状況が良好なときは低圧縮率、高解像度な映像伝送を行い、通信状況が悪化した場合には、高圧縮率、低解像度の映像伝送を行うといったことが可能になる。帯域が狭い回線でも、帯域をフルに生かしながら、無遮断の映像伝送が行える。取締役を務める福澤美雪氏は「レート制御機能によって、通信設備が小さくて済む一般的な無線LANなどの狭帯域無線でも比較的高品質な映像を伝送できるようになったため、バイクや自転車を使った小型移動中継車によるマラソン中継などがより行いやすくなった」という。
エクスプローラでは、NHKの協力を得て、5年ほど前に、フルハイビジョン/H.264対応のレート制御機能搭載コーデック装置を製品化。「レート制御機能搭載した装置は、他にないはず」(福澤氏)という状況も手伝って、NHKなどのテレビ局、CATV局の移動中継システムの他、インターネット回線を利用したセキュリティカメラシステムなどへの納入実績を伸ばしてきた。
そして、「4K、8K対応の放送設備需要の拡大が見込まれる」として、4K、8K映像のコーデックの主流となるH.265/HEVCへの対応を決定。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」にも採択され、開発を本格化させた。「今秋にも開発を完了させ、2014年1〜3月には販売を開始したい」(福澤氏)とし、よりデータ量が増大し、レート制御機能の利点が生きてくる4K、8K関連需要を早くから取り込んでいく方針。
同時に、親会社でエレクトロニクス商社のPALTEKの販売網を活用しながら、放送分野以外での需要の取り込みも図る。PALTEK社長で、エクスプローラ社長も兼務する矢吹尚秀氏は「安価なインターネット回線で安定した映像を伝送したいというニーズは多い。セキュリティシステムをはじめ、遠隔医療システム、各種コンテンツ配信サービスなどいろいろある。当面は、コーデック装置としての拡販を進めるが、将来的にレート制御技術をIPとして、ゲーム機や民生機器などの分野に提案することも検討していく」と語っている。
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