NIWeek 2013の2日目の基調講演の冒頭に登場した同社のフェローで“LabVIEWの父”と呼ばれている開発者Jeff Kodosky氏によると、LabVIEWは1986年の登場以来、科学研究の分野で受け入れられているという。同氏は、最先端の研究分野である生命科学、神経科学、高エネルギー物理学、ナノ科学、環境科学におけるLabVIEWの貢献を紹介した。
米国カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)の生命科学研究者らは、これまで顕微鏡による観察では非常に困難だった精子の運動を、2色のLEDを異なる角度から照射し、複数のCMOSセンサーを使ってホログラム映像として記録した。このデータを画像解析することで、精子の運動を立体的かつ時間軸も含めてとらえ、初めて精子の運動がいくつかのパターンに分かれていることを突き止めた。この実験・研究において、全てのコンポーネントはLabVIEWで動いているという。研究者のOzcan博士は「LabVIEW以外のツールでは不可能だった。LabVIEWでは全てがモジュール化されていて、研究室の他の装置と統合することも、セットアップも容易である。これがわれわれの研究に柔軟性を与えている」と評価している。
企業の製品開発やシステム開発におけるLabVIEWの生産性向上の例も紹介された。スポーツサイクルブランド「Specialized」を展開するSpecialized Bicycle Componentは、自転車の新製品開発にLabVIEWを活用している。同社は自転車専用の風洞を作ったが、その風洞に風を送るファンの制御と、気温、空気密度、湿度、自転車のバランス、自転車にかかる力などのアナログデータ、自転車を載せた回転台*)の角度や車輪の回転数などのデジタルデータ、さらにカメラ入力までもLabVIEWと、計測/制御用ハードウェア「PXIe」で構成したシステムで記録し、分析に役立てている。
*)いろいろな角度から風を当てるために、自転車を回転台に載せている。
英国の地下鉄の車両制御運行システムを運用しているThalesでの応用例では、運行システムのテストにおける大幅な生産性向上が紹介された。従来の運行システムテストでは、テスト用の実車両を走らせていたが、このために通常の運行スケジュールにも影響があるだけでなく、大人数が関わるなど、準備を含め大変な作業となっていた。
この解決のため、Thalesは小型のテスト用作業車にcRIOを積んだ。cRIOは実際の車両の機械的な動作をシミュレーションすると同時に、運行システムとの通信と走行時の計測データを集録する。小型テスト車によるテストは、LabVIEWエンジニアを含む3人のチームだけで可能になり、以前は1週間かかっていたテストをわずか30分で実施できるようになった。全体で500トン以上ものCO2排出量を削減できたことになるという。
基調講演ではこれら以外にもいくつもの科学・産業分野での研究開発や社会貢献につながる応用例が取り上げられ、NIがさまざまな分野でそれまでできなかったことを可能にしたり、生産性向上に貢献したりしていることが紹介され、会場を埋めた参加者からの拍手を受けていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.