ホンダの伊藤孝紳社長は、今回の提携発表において、「燃料電池車は、CO2排出量ゼロを実現するあらゆる技術の中で、最も優れた長所を備えている。また、燃料である水素の補充時間も、従来のガソリン車の給油時間と比べてほとんど変わらない」と述べている。
GMのCEOであるDan Akerson氏も、「今回のホンダとの提携は、極めて重要な技術開発に取り組む上で、最良の選択肢だったと確信している。また、燃料電池車は、石油への依存を減らせるだけでなく、持続可能なモビリティ社会を実現することも可能だ」とコメントしている。
さらに両社は、水素ステーションネットワークの拡大に向け、共同でロビー活動に取り組んでいくことも明らかにした。現在、米国で水素ステーションの設置数が最も多いのは、カリフォルニア州だという。
自動車メーカーは今こそ、燃料電池車の利点をもう一度見直すべきである。その最大のメリットは、電気自動車向けに既に開発されている技術の一部を、燃料電池車にも適用できるという点だ。業界の専門家によると、燃料電池車は、電気自動車とほぼ同じ電気モーターを使用して、車輪やブレーキ、ソフトウェア、関連する電子機器などを駆動する。ブレーキは、車体を停止させる時に電力を回収する。
GMとホンダは共に、燃料電池技術の分野における先駆的な企業であり、特許も大量に保有している。しかし、2013年初め頃から、両社の競合企業が次々と燃料電池車の流れに乗り始めた。例えば、トヨタ自動車とBMWは同年1月、燃料電池の製造に関するアライアンスを結成している。また、DaimlerとFord Motor、日産自動車も同時期に、手頃な価格の燃料電池車の実現に向け、共同開発に取り組むことを発表した。早ければ2017年にも販売を開始したい考えだという(関連記事:日産、ダイムラー、フォードが燃料電池車開発で協業、2017年に量産へ)。
GMとホンダによると、燃料電池車の開発には巨額のコストがかかるため、システムの共同開発が不可欠だという。高額な開発コストの要因としては、燃料電池スタックにPt(白金)が必要であることや、ガス状の水素を車体に搭載して保管する上で、炭素繊維(カーボンファイバ)を使用した貯蔵タンクが必要であることなどが挙げられる。
GMとホンダは、「今回のアライアンス結成により、両社のエンジニアの交流や、研究施設の供用、部品や材料などのリソース共有、関連する全てのIP(Intellectual Property)の完全な相互共有などを行っていく」としている。ただし両社は、燃料電池車の低価格化を実現するという目標を掲げながら、その具体的な価格についてはコメントを避けている。また、研究開発費についても詳細を明かさなかった。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.