第5世代(5G)携帯電話通信網の実現に向け、欧州委員会が規格策定団体を正式に発足させた。欧州では、5G規格のドラフト版が既に発表されているが、通信容量の増加と消費電力の低減、効率の向上を目指し、本格的に話し合いを進めるとしている。
欧州委員会(EC:European Commission)は、第5世代(5G)携帯電話ネットワークの実現に向け、「5GPPP(5G Public-Private Partnership Association)」を正式に発足させた。2020年以降の実現を目指し、取り組みを加速させていく。5GPPPは、現行のLTEネットワーク向け仕様の開発に取り組む事実上の標準化プロジェクト「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」の後継となる。
5GPPPの影響力は極めて大きいが、次世代携帯電話ネットワークの標準化に取り組んでいるのは5GPPPだけではない。例えば中国は、3G携帯電話機の開発に成功して以来、LTE規格の別バージョンの開発においてグローバルな取り組みを主導してきた。
今回の5GPPPの先駆けとなるグループが2013年初頭、5G向け規格のドラフト版を発表している。次世代携帯電話ネットワークの実現に向け、展望の概要や研究課題などを提示した。
このドラフト版の策定にあたり、通信事業者やシステムメーカー、研究グループなど、合計で24の団体が共同で取り組んだ。参画企業としては、Alcatel-LucentやEricsson、Orange(旧France Telecom)、Huawei、Intel、ノキアソリューションズ&ネットワークス(NSN)、Telecom Italiaなどがある。
ドラフト版では、ネットワークにおいて将来的に、無線ネットワークとクラウドコンピューティングデータセンターの要素を融合することを想定している。最終的な目標として、以下を掲げている。
「今後10年の間に、主に汎用/プログラマブルハードウェアをベースとした共通インフラの実現に向けて、電気通信とITを統合していくことにより、トランスポートやルーティング、ストレージなどに向けたリソースを提供できるようになるだろう。ネットワーク装置は今後、仮想化技術をベースとして、プログラム可能なリソースを収集できるようになり、コンピューティング機器と同等の位置付けを得ていく見込みだ。このようなネットワークにおいて、コンピューティング/ストレージリソースを集中型インフラに組み込むことにより、IT/ネットワークサービスを統合的に提供することが可能になる」
ドラフト版によると、5Gネットワークの通信容量は、2010年に実用化された3Gネットワークに比べて、1000倍になるという。しかも、ネットワークサービス当たりの電力消費量を、約1/10に低減可能だとしている。
さらに、無線や光学の他、新型のエアインタフェースをはじめとするソフトウェアなど、幅広い技術分野における研究を進めることにより、電力効率を80%高められると主張する。また、チャネルモデリングやアクセス、干渉処理などにおける新しい無線技術の必要性や、複数のアンテナの導入、不連続ブロックのスペクトルの共有などについて、重要性を説いている。
5GPPPの議長を務めるWerner Mohr氏は、「5GPPPを正式に策定し、取り組みを進めていくことにより、5Gに関する使用事例や要求事項、技術などついて業界全体の合意を実現していく上での重要なマイルストーンを達成できる」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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