米国で開催されたエンジニア起業家向けの会議「TiEcon 2014」で、クアルコムの新CEOは同社がIoT(モノのインターネット)向けチップの開発に取り組んでいることを明らかにした。同氏はIoTのターゲットとして注目されているウェアラブル機器市場については「まだ黎明(れいめい)期」とし、セキュリティやプライバシーの問題を指摘している。
2014年5月16〜17日に米カリフォルニア州で開催された世界最大規模のエンジニア起業家会議「TiEcon 2014」の基調講演で、Qualcommの新CEO(最高経営責任者)Steve Mollenkopf氏は、「IoT(モノのインターネット)向けチップの開発に取り組んでいる」と明かした。一方、IBMの「IBM Watson Group」のリーダーは、同事業部が狙う市場や技術的な方向性について語った。
Mollenkopf氏は、「事業拡大に向けて、IoT向けの製品や技術のポートフォリオを構築している」としながらも、「IoTが何を意味するのかは、人によって異なる。多くの人にとっては無意味なことかもしれない」とも語った。
同氏は、IoTを「携帯電話機よりもずっと裾野が広い、ネットワークの先端技術」と定義している。ウェアラブル機器については「まだ黎明(れいめい)期。セキュリティやプライバシーの問題や、ファッションマーケティングといった、技術以外の課題が多い」と指摘した。
「役に立つとは思えないデバイスでも、発表された瞬間に技術革新は起こっている。それを役立つものにする人が現れるかもしれないからだ。だが、たとえそうだとしても、あえて1000本ノックに挑もうとは思わないだろう。高い野心を持つ開発者は、そんなやり方はしない」と付け加えた。
そういう意味で、Qualcommは今、次に取り組むべき課題を明確にしようとしている。「当社は、業界で起こっているさまざまな変化に対応できる体制にある」と同氏は言う。Qualcommが、半導体製造とIPコアの開発という2つの事業を柱に据えていることも興味深い。ライセンシンググループは、同社で最も利益を上げている部門だという。
IBMの人工知能「Watson」を専門に手掛けるIBM Watson Groupのリーダーを務めるMike Rhodin氏は、講演で同社のソフトウェア部門の前途について語った。その中で同氏は、ビッグデータのIP(Intellectual Property)が多くの企業にとって利益の中心になる可能性を示唆した。
Rhodin氏は、講演の出席者に「われわれはWatsonに、ユーザーの心理言語学的な動的プロファイルを実行する機能を組み込んでいる。Watsonは皆さんを理解できる。皆さんの質問の意図を把握し、より適した答えを返す」と説明している。
Watsonには、質疑応答の形を超えた対話能力や、複雑な問題に従来よりもさらにきめ細かいアプローチで答える論理的思考も搭載されたという。Rhodin氏は、「Watsonは、確率論や自然言語入力による機械学習を利用して問題解決を行っている。Apache Software Foundationの『Hadoop』やGoogleの『MapReduce』のようなビッグデータ向けの分散コンピューティングアルゴリズムとは根本的に異なる」と述べる。
IBMは、Watsonを新興企業やIT企業、大学などに開放している。これらの大学の中には、米カリフォルニア大学バークレー校、米カーネギーメロン大学などが含まれている。
現在、IBMはWatsonについて収益よりも投資を重視している。2013年にはWatsonの開発に、10億米ドルを投資すると発表した(関連記事:IBMが人工知能「Watson」の開発を加速、新事業所設立で10億ドル投資へ)。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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