ルネサス エレクトロニクスは2014年7月、マイコン製品に搭載する機能回路IPとして、新世代静電容量式タッチキーIPを開発した。「業界最高クラスの感度と、耐ノイズ性を実現した」とする他、水検知機能も備え、2015年以降に量産する白モノ家電やヘルスケア機器向けを中心にしたマイコン製品に搭載していく。
ルネサス エレクトロニクスは2014年7月15日、マイコン製品に搭載する機能回路IPとして、新世代静電容量式タッチキーIPを開発したと発表した。「業界最高クラスの感度と、耐ノイズ性を実現した」とする他、水検知機能も新たに備え、2015年以降に量産する白モノ家電やヘルスケア機器向けを中心にした自社マイコンに搭載していく。
静電容量式タッチキーは、従来の機械式ボタン、スイッチを代替するユーザーインタフェースとして、白モノ家電やヘルスケア機器を中心に急速に普及しつつある。機械式ボタン/スイッチでは、すき間が生じるため、粉じんや水滴が機器内部に入り込まないよう対策が必要であったり、摩耗などの劣化があったりするなど課題を抱えた。その一方で、静電容量式タッチキーはそうした課題がない上、製造コストが安価であり、またさまざまなデザインのユーザーインタフェースが簡単に実現できるなどのメリットもあり、急速に機械式ボタン/スイッチを置き換えつつある。
タッチキーの制御機能は、一般に専用ICではなく、マイコンの一部機能として搭載されるケースが多く、マイコンベンダーの多くはタッチキー制御機能回路搭載マイコンを製品化している。ルネサスも2009年10月にタッチキー制御機能回路搭載マイコン「R8Cファミリ R8C/3xT」を製品化し、「白モノ家電をはじめとしたさまざまな用途で採用されてきた」という。
今回、開発した静電容量式タッチキーIPは、R8Cに搭載したIPに続く第2世代IPで、今後発売するRL78ファミリやRXファミリといったマイコン製品に搭載していくもの。従来世代に比べ、各機能、性能を高め、より使いやすいタッチキーIPとして展開していく。
特に、第2世代IPは、「業界最高クラス」という高い感度が特長。従来、静電容量を検知する基板と操作する指の間は、厚さ2mm(アクリル板時)までの対応だったが、第2世代IPでは10mm厚まで対応できる高感度を実現。10mm厚まで対応することで、IHクッキングヒーターなど厚いガラストップを用いる用途の他、歪曲したカバー板など複雑なデザインのユーザーインタフェースも可能になる。
さらに第2世代IPは静電容量検知方式として、従来の自己容量方式に加え、相互容量方式にも対応した。相互容量方式は、片面基板で実現でき低コストな自己容量方式に比べ、複雑な2層構造の検知用電極を必要とするものの、縦軸/横軸のマトリクスで検知を行うため、キー数が多い場合にはシンプルな配線でタッチキーを実現する。
また、自己容量方式は、検知用電極と指の間に発生する静電容量の増加量で検知する仕組みだが、検知用電極に水がかかった場合でも静電容量が発生するため、水と指の違いが検出しにくく、水に弱い特性を持つ。
一方で、相互容量方式は、2つの電極間の電界が、指が近づくことで減少する仕組みを利用するもので、水が電極上にかかっても電界はほとんど変わらず、水と指を見分けて検知することができる。このため、第2世代IPは、「噴きこぼれの恐れがあり、水対策機能が不可欠なIHクッキングヒーターや、水ぬれの恐れが強い水回りの白モノ家電でも、静電容量式タッチキーをより容易に導入できるようになる」(ルネサス)としている。
またルネサスでは、2014年内にも予定している第2世代タッチキーIP搭載マイコンのサンプル出荷に合わせて、タッチキーの感度などを調整する開発ツールについても一新する予定で、「詳細は明かせないが、開発工数を大幅に削減する開発ツールになる見込み」とする。
「静電容量式タッチキーは、産業機器や車載機器などにも広く普及する見通し。各マイコンメーカーが注力している分野だが、高い感度/耐ノイズ性能に加え、自己容量方式/相互容量方式の双方に対応するIPは他になく、当社マイコンの1つの特長として打ち出していきたい」としている。
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