2つ目の業界団体に関しては、Wi-Fi Allianceの動きに注目したい。無線業界に対して強い影響力を持つWi-Fi Allianceが、IEEE 802.11acとIEEE 802.11adに対して積極的な姿勢を示しているのだ。2008〜2009年に盛り上がった無線通信規格とはこの点が異なる。
Wi-Fi Allianceはこれまで主に、IEEE802.11作業部会が策定した無線LAN規格の認証プログラムを作ったり、市場に製品を投入し普及させるためのマーケティング活動を進めてきた。ネットワーク接続に使う無線LAN技術は、互換性が命である。そこで、「IEEE 802.11b/g/n」といった既存の無線LAN規格では、後方互換性を確保しつつ、高速化を進めてきた。こうした後方互換性や相互接続性を確保する枠組みを作ってきたのが、Wi-Fi Allianceである。無線LANがここまで普及した陰の立役者は、Wi-Fi Allianceだと言っても過言ではない。
まず、IEEE 802.11acについては、2010年11月の時点で、IEEE 802.11nの後継規格だと明確に表明した(関連記事)。2011年5月に報道機関向けに公開した資料によれば、IEEE 802.11acの認証プログラムを2012年下半期に始める予定である。もちろん、既存の無線LAN規格との後方互換性も確保される。
60GHz帯を使うIEEE 802.11adについては、この方式の業界団体であるWiGig Allianceと協力して認証プログラムを策定することを、2010年5月に発表済みである(関連記事)。IEEE 802.11adに基づくWiGig規格の特徴は、「IEEE 802.11を拡張したMAC層を利用しており、既存のIEEE 802.11規格と後方互換を確保していること」(WiGig Alliance)だという。例えばIEEE 802.11nを使いつつ、映像を短時間に送りたいときだけ60GHz帯を使うといった利用シーンを想定している。このように、既存のIEEE 802.11規格で使う2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、60GHz帯に対応した機器を、Wi-Fi Allianceでは「Tri-Band Wi-Fi CERTIFIED Device」と名付けた(図7、図8)。2011年5月に報道機関向けに公開した資料によれば、IEEE 802.11adの認証プログラムも、2012年下半期に開始する予定だという。
3つ目の技術的な変化という観点では、データ伝送速度を高速化しつつも、モバイル機器に受け入れられるように、消費電力や実装面積を抑えることが重要になる。2008〜2009年時点の高速の無線通信技術は、デジタル家電におけるハイビジョン映像の無線伝送を主なターゲットにしており、消費電力や実装面積も大きかった。これに対して、IEEE 802.11acやIEEE 802.11adも含め、図4に挙げたモバイル機器を狙った高速無線技術は、消費電力や実装面積といった観点で、大きく進化している。
「技術編」では、IEEE 802.11acとIEEE 802.adがなぜ高速化できたのか? 高速化の実現手法を解説する。
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