新型CPU「Ivy Bridge」を正式に発売したIntel。Microsoftの最新APIに対応していることも特徴の1つで、それによりグラフィックスチップの分野でトップに立つAMDに迫ろうとしている。
Intelは2012年4月23日に、3次元ゲート(Tri-Gate)構造のトランジスタ技術を採用した22nmプロセスの次世代CPU「Ivy Bridge」の製品ファミリを発表した。アナリストによると、Intelは今回、新型CPUを投入することによって、グラフィックスチップの分野で現在トップに立つ最大のライバル企業AMDに迫る勢いを得るとみられる。さらに、Appleの「iPad」などをはじめとするタブレット端末の猛追を受けているノートPC市場に、新風を吹き込むことにもなりそうだ。
AMDは、32nmプロセスを適用する次世代CPU「Trinity」の発表を間近に控えている。同社によると、28nmプロセス技術を適用した半導体チップを発表できるようになるのは、2013年以降の見込みだという。
一方のIntelは、2013年には、同社の次世代アーキテクチャとして初めて22nm技術を適用する「Haswell」に移行するとみられる。米国の半導体市場調査会社であるInsight64で主席アナリストを務めるNathan Brookwood氏は、「Intelは、Ivy Bridgeをはじめとする第3世代CPUにおいて、新しいプロセス技術を採用することにより、10〜20%の性能向上を達成する。さらに、その次の世代のHaswellでは、プロセスを最適化することでさらなる性能向上を実現するとみられる」と述べている。
Brookwood氏は、「Ivy Bridgeは、近年におけるIntelとAMDとの競争関係を際立たせることになるだろう」と述べる。
同氏によると、「Ivy Bridgeのx86コアは、Trinityの性能を上回る。しかし、Trinityのグラフィックスコアの性能は、Ivy Bridgeを上回る見込みだ」という。
Ivy BridgeはIntelにとって、Microsoftの最新のグラフィックスAPI(Application Programming Interface)「DirectX 11(DX11)」のサポートを実現した初めてのCPUとなる。DX11サポートは、AMDがこれまで自社のプロセッサの優位性を示す特徴としてアピールしてきたものだ。このためBrookwood氏は、「AMDは今後、同社のDX11サポートの方がIntelよりも優れているとする論争を展開していかなければならない。非常に難しい課題になるだろう」と述べている。
IntelとAMDの新型CPUのパッケージはBGAである。プロセッサをソケット無しでマザーボードにはんだ付けできるため、「Ultrabook」や、Appleの「MacBook Air」に類似した薄型/軽量ノートPCなどへの搭載が可能となる。
Intelは、Ultrabookのカテゴリを定義し、起動時間や厚み、セキュリティ機能などの要件について、さまざまなシステム仕様を定めている。これによって現在、Ultrabookの価格は1000米ドル前後となっている。ただし、2012年後半には700〜800米ドルに下がる可能性もある。Intelの投資部門であるIntel Capitalは、Ultrabookのコンセプトを継承した技術開発をサポートすることを目的に、3億米ドルの基金を立ち上げている。
一方、Trinityについて、Brookwood氏は、「全般的に価格が低いTrinityは、Ultrabookのカテゴリに属さない600米ドル前後の安価な薄型/軽量ノートPCに搭載されるだろう」とみている。
AMDは、これまでIntelに対し、ほぼ同等の機能や性能を備えたチップを低価格で提供することによって対抗してきた。Intelは、米カリフォルニア州サンフランシスコで開催したイベントの中で、新しいグラフィックス機能について数々の注目すべき点を説明したが、Ultrabook向け製品の提供については、今後数週間を要する見込みだという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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