あるアナリストがAppleの「iPad 3」の設計には問題があるという旨の分析結果を明らかにした。iPad 3のGPUは、同製品が備える高性能のディスプレイに対して能力が不足しているという。このことが理由となって、Appleは「iPad 4」への移行を強く推し進めている。
PC関連技術の記事やホワイトペーパーの発信を手掛ける米Real World Technologiesで主席アナリストを務めるDavid Kanter氏は、2012年1月、Appleの「iPad」の第3世代品(以下、iPad 3)は設計上の問題を抱えているとの分析結果を発表した。具体的には、iPad 3のGPUは、同製品が備える高性能のディスプレイに対して能力が不足しているという。Appleは、Samsung Electronicsの新たな32nmプロセス技術を採用して部分的に性能強化を図ったGPUを搭載する第4世代のiPad(以下、iPad 4)への移行を急速に推し進めようとしている。「こうした動きは、AppleがiPad 3の欠陥を認識していることを示している」とKanter氏は述べている。
Kanter氏の分析結果は、「Appleは、同社の『A』シリーズのプロセッサのうち少なくとも一部の製造委託先を、SamsungからTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)に変更する」という報道が流れる中で発表された。台湾における複数の報道によると、TSMCは2013年第1四半期にiPad 4向けにAppleのプロセッサ「A6X」の試作を開始するという。
Appleが製造委託先をSamsungからTSMCに変更するといううわさは、2011年3月から流れていた(関連記事:Apple製品のヒットで、Samsungのファウンドリ売上高は大幅増加)。AppleとSamsungは、2012年に米カリフォルニア州サンノゼ地裁で結審した訴訟を含め、世界各地で行われている特許侵害に関する法廷闘争でこう着状態にある。
SamsungとTSMCはいずれも、Aシリーズのチップの性能を高め、消費電力を低減するために、28nmプロセスのファウンドリサービスをAppleに提供する可能性がある。あるアナリストは、Appleがスマートフォンやタブレット端末で競合するSamsungとなかなか決別しないことを指摘しつつ、「Appleはファウンドリサービスに関してSamsungと長期的な契約を結んでいる可能性がある」との推測を行っている。
Kanter氏は、「Appleにとって重要なのは最新のプロセス技術を利用できるようにすることだ」と述べている。その上で同氏は、「『A5X』はコストが高く消費電力が多かった。Appleが発売からわずか7カ月でiPad 3の製造中止を選択した背景には、それらの要因が存在することは間違いない」と指摘した。
Appleは、2012年3月に発売したiPad 3にSamsungのRetinaディスプレイを採用するに当たり、迅速な対応を図った。だが、Kanter氏によると、A5Xが備えるGPUでは、2048×1536画素の新たなディスプレイに十分には対応できなかったという。なお、A5Xは、従来型のSiON(シリコン酸窒化)ゲート誘電体を採用し、Samsungの45nmプロセスを用いて製造している。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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