Googleは、2〜3カ月後にリリース予定のAndroid最新版で「Bluetooth Smart Ready」と「Bluetooth Smart」について、ネイティブサポートする。「Bluetooth」無線技術は、携帯情報端末の主要OSでサポートされることで、その用途はさらに拡大する見通しだ。これとは別にBluetooth SIGでは、新たなネットワーク手段として「ゲートウェイルータ」(仮称)デバイスの仕様検討を進めている。
短距離無線通信規格である「Bluetooth」無線技術が、その用途をさらに拡大することになりそうだ。Googleが、2〜3カ月後にリリース予定のAndroid最新版で「Bluetooth Smart Ready」と「Bluetooth Smart」について、ネイティブサポートすると2013年5月に発表したからだ。これとは別にBluetooth SIGでは、新たなネットワーク手段として「ゲートウェイルータ」(仮称)デバイスの仕様検討が進められている。ネットワーク環境が拡充されることで「モノのインターネット(IoT)」化は一段と加速され、2018年にはBluetooth対応機器の出荷が累計で310億台に達すると予測されている。
Bluetooth無線は、1998年に設立されたBluetooth技術の認証団体である「Bluetooth SIG」やそのメンバー企業が中心となって、新たな通信規格の策定や普及活動を行ってきた。この結果、Bluetooth対応機器は2013年だけでも25億台が出荷され、1999年以降の累計出荷は100億台に達している。
2010年7月には最新版のBluetooth v4.0が正式に策定され、その主な機能として消費電力を低減する「Low Energy」モードが追加された。Bluetooth SIGでは、このモードに対応したものをスペックナンバー(Bluetooth v4.0 Low Energy)とは別に、ブランド名として「Bluetooth Smart」と呼ぶことにした。
Bluetooth Smartは、従来のBluetooth規格に比べて消費電力を約1/10まで削減できるという。これまでのBluetoothは、主にオーディオ分野で広く利用されていたが、電力消費が少ないBluetooth Smartの登場で、ヘルスケアや医療、フィットネス/スポーツなどの分野にも用途が拡大した。具体的な対応機器としては腕時計や歩数計、リストバンド、電動歯ブラシなどがあり、体重や血圧、心拍数、血糖値、歯磨きの時間や回数などのデータを収集し、Bluetooth無線を介して携帯情報端末に送信する。
ただし、Bluetooth Smartはv4.0以前のBluetooth規格とは互換性がないため、そのブリッジ機能の役割を果たす「Bluetooth Smart Ready」規格が用意された。Bluetooth Smart Ready対応の携帯情報端末は、デュアルモード対応のICチップを搭載することになる。そして受信したデータを有効活用するためのアプリケーションソフトウェアをインストールすることで、入手したデータの処理と表示を行うことができる。
「Bluetooth Smart Ready」をネイティブサポートしているOSは、これまでAppleの「iOS」のみだったが、2012年10月にBlackBerryが「バージョン10」で、2012年11月にはMicrosoftが「Windows8」で、それぞれ対応すると発表した。そして今回、Googleは数カ月後にリリースを予定している「Android API v18」において、「Bluetooth Smart Ready」と「Bluetooth Smart」のネイティブサポートを行うと発表した。
Bluetooth SIGでグローバルインダストリ&ブランドマーケティングのディレクタを務めるErrett Kroeter氏は、携帯情報端末における主要OSの市場シェアに関する調査結果に触れ、「2011年3月の時点ではiOSが50%近くを占めていたが、2013年1月時点では約35%となった。逆にAndroid OSはこの期間で、約40%から63%台に市場シェアを拡大している。これまでは、Apple製の携帯情報端末ユーザーのみが、Bluetooth無線通信の利便性を享受することができた。今後はAndroid端末ユーザーも魅力的なアプリケーションを活用できるようになる」と、ユーザーのメリットについて話す。さらに、「携帯電話やタブレット端末のメーカー、アプリケーションソフトウェア開発会社にとっても大きなビジネスチャンスとなる」と付け加えた。
米国の調査会社によれば、Bluetooth Smart対応機器(Bluetooth SIGでは『Bluetooth Smartアプセサリ』と呼ぶ)の市場規模は、2013年の2億2000万台に対して2016年には10億台に拡大すると予測している。Bluetooth SIGでは、Bluetooth Smart対応機器の開発を支援していくために、「Bluetoothクイックスタートキット」や、Android開発者コミュニティ向けリソース「Bluetoothアプリケーションアクセラレータ」を用意している。
Bluetooth SIGでは、「モノのインターネット(IoT)」化を一段と加速していくために、新たなネットワークコンセプトとして「ゲートウェイルータ」(仮称)デバイスの仕様検討を始めている。例えば、家庭内に設置したアラームセンサーやドアロックセンサーなどをBluetooth Smart無線でゲートウェイルータに接続し、スマートフォンでセキュリティを監視するようなシステムを想定している。「近い将来、開発が完了する」(Kroeter氏)予定だ。ゲートウェイルータは、Bluetooth Smart無線のみの対応を考え、「デュアルモードへの対応は必要ない」という。既に、Bluetooth SIGのメンバー企業である村田製作所が、展示会などで参考展示を行っている。
さらに、Bluetooth SIGでは、「M2M(Machine to Machine)システムへの対応も1つの試み」と考えている。Kroeter氏は、「現状のBluetooth規格では、機械の制御については考慮されていない。しかし、今後はBluetooth規格がM2Mシステムに対しても、果たすべき役割はあるだろう」と語った。
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