リニアテクノロジーは2014年10月、無線センサーネットワーク技術「dust networks」(ダスト・ネットワークス)の日本国内での普及を目的とした「ダスト・コンソーシアム」を設立した。
リニアテクノロジーは2014年10月17日、無線センサーネットワーク技術「dust networks」(ダスト・ネットワークス)の日本国内での普及を目的とした「ダスト・コンソーシアム」を設立した。同日、ダスト・コンソーシアム設立発表会と第1回会合を開いた。
リニアテクノロジーは、2011年に独自の無線ネットワーク技術を持つ企業だったDust Networksを買収し、「ダスト・ネットワークス」ブランドで無線センサーネットワークビジネスを展開している。
ダスト・ネットワークスの無線技術(SmartMesh)は、IEEE802.15.4準拠の物理層を用い2.4GHz帯を使用するセンサーネットワーク向けの無線技術だ。
最大の特徴は高い接続性を低消費電力で実現する点。メッシュネットワークに対応し、環境に応じて通信ルートを再構築できる機能による空間冗長性を備える。同時に15チャネル、75MHz幅で送信周波数を変化させるチャネルホッピング技術で周波数冗長性を実現し、さらには時間的冗長性を持たせた通信も行える。「空間、周波数、時間という3つの冗長性を持つ唯一の無線として、有線技術と同等以上のほぼデータ欠損のない高い接続性を実現できる技術」(リニアテクノロジー)という。また、独自の時間同期技術により、無線で接続される端末間で時間を正確に同期させ、通信する時にだけ動作し、通信を行わない際は全ノードで電源をオフにできる機能を備えるため「乾電池動作でも10年以上、メンテナンスを行わず、安定して動作が行える」という特長も持つ。
同じIEEE802.15.4準拠の物理層、2.4GHz帯を使用する無線にはZigBeeなどがあるが、「ZigBeeでは、メッシュ機能を持たせたノードを電池駆動させることは難しく、メッシュ機能がなければ欠測の発生が避けられない。また、ネットワーク内の全てのノードは1チャンネルの周波数を共有する必要があり、信頼性に欠けるだろう」(同社)とする。
ただ、ダスト・ネットワークスの技術は全ての用途に向くわけではない。例えば、ホップを行うため、1ホップ当たり1秒程度の転送遅延が生じるため、極端なリアルタイム性が要求される用途には不向きだ。また転送速度も3Kバイト/秒程度であり、大容量高速通信は行えない。ただ、「こうしたダスト・ネットワークスの無線が応用できる範囲は広く、特に状態監視、状態制御分野には最適な技術」とし、インフラを中心としたモニタリング用途への提案を強化している。
既に欧米では、多数の採用実績を持つ。設立発表会でも米国ロサンゼルス市での駐車スペース監視システムや化学プラントの監視システム、鉄道の貨車監視システムなどの応用例を紹介した。
リニアテクノロジーの日本法人でも2013年2月から、本格的にダスト・ネットワークス製品の販売をスタートし、インフラ監視などの分野への提案を実施。その中で、「ハード/ソフトベンダー、システムインテグレーター(SI)、サービスプロバイダーといったさまざまな業種のユーザーから、ユーザー間で協業の場を設けてほしいという要望が多数あった」(日本法人代表 望月靖志氏)ということで、日本独自に「ダスト・コンソーシアム」を設立することを決定。2014年9月から参加企業を募集し、この日までに約130社の応募があったという。
ダスト・コンソーシアムの事務局長を務める同日本法人ダスト・エバンジェリスト 小林純一氏は「想定以上の参加企業が集まった。参加企業に多くのビジネス機会を与える場、異業種交流の場として活用してもらえるよう活動していく」とし、半年に1度のペースで会員企業が集まるイベントを開催するなどしていく方針。
望月氏は、「“つながる”があらゆる分野でのキーワードになっている。設置のためのコストが掛かり、フレキシビリティに欠ける有線に頼ることができない。有線の信頼性を実現するダストで無線化して、老朽化などで生じる悲惨な事故を防ぐなどし、社会に貢献していきたい」と語った。
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