電源の制御信号を生成する高速高分解能I/Oボードは、自動車分野向けに構築されたモデル制御動作環境を電源向けに必要な能力を補うことで実現した。制御信号の生成は、電源の出力を安定させために、現在出力している電圧値を取得し、その値から次の制御量を決定しなければならず高速性が求められる上、一定周期で行う必要がある。
そこで、富士通研では、毎回一定周期内に電圧値取得から制御信号出力までを完了させるため、制御量の計算処理と制御信号の出力をオーバーラップさせる処理方式を新たに開発することでボードの処理能力を強化。電源制御信号を最大150kHz超の制御周期、150ピコ秒の時間分解能で生成する機能を「世界で初めて実現した」(富士通研)という。
高速高分解能I/Oボードにより制御対象を実電源回路とし、コントローラーの方は仮想的な制御モデルをもとに高性能計算機に生成させた制御信号を加えるテストを行うことで、問題発生時に回路モデルと実電源回路のギャップだけに切り分けることができる。さらに、問題解決後はチューニングにより、制御ロジックの性能を追求できるようになる。
自動生成する組み込みコードは、モデル制御における動作確認後の実電源回路の制御マイコン上でも、一定周期時間内で処理を完了する必要がある。ただ、これまでの制御モデルは、処理時間が長い要素モデルの組み合わせで構成されるため、処理時間に時間を要した。これに対して富士通研は、マイコン制御に適したコードを出力する独自要素モデルに置き換えることで、処理時間の短縮を図ったという。
この組み込みコード自動生成技術により、「I/Oボードにより実電源回路に対し性能が確認できた制御ロジックをもとに、組み込みコードを作成する際の人為ミス混入を完全排除できる」(富士通研)。
富士通研では一連の開発技術を製品開発に適用することで、「高性能、高機能な電源を、信頼性を維持しながら従来手法の約3分の1の短期間で開発が可能となり、タイムリーな電源ニーズに応えられる」という。
2015年度中をメドに実用化し、富士通グループ内の製品開発に適用する予定の他、同開発技術を自動車などIT機器以外の電源への適用に向けた検討を進めていく方針。
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