新日本無線とユー・エム・シー・グループ・ジャパンは、アナログIC向けの製造プラットフォームを共同開発している。新日本無線はこの技術をもとに、オペアンプや電源ICなど50製品を製品化してきた。さらに車載機器や産業機器向けを中心に、30製品を新たに開発していることを明らかにした。会見ではこの成果の一例として、低ノイズと低パワーを両立させたCMOSオペアンプの開発を挙げた。
新日本無線とユー・エム・シー・グループ・ジャパンは2014年1月21日、アナログICの設計/製造に関わる協業体制とその成果について記者説明会を開催した。両社が協業に踏み切った目的の1つは、製造プラットフォームの共同開発とその活用である。新日本無線は、この協業に基づきオペアンプや電源ICなど50製品を製品化してきた。さらに車載機器や産業機器向けを中心に、30製品を新たに開発していることを明らかにした。会見では、この成果の一例として低ノイズと低パワーを両立させたCMOSオペアンプの開発を挙げた。
新日本無線は、2000年ごろからUMCとファウンドリ契約を結び、製品ごとに製造プロセスを移管して、アナログIC製品の製造委託を行ってきた。2006年からはその関係を一歩進め、製造プラットフォームの共同開発に乗り出した。アナログICの場合、チップの性能/特性が回路設計だけでなく、製造プロセスにも大きく依存することがあるからだ。このため両社は、新日本無線が有する回路設計ノウハウと、UMCが得意とする製造プロセスのノウハウを融合して、特性に優れたアナログICを実現していくためのデバイスプロセス技術や設計環境を共同で開発した。
新日本無線は、協業した成果の一例としてローパワーCMOSオペアンプ「NJU77806」を挙げた。NJU77806は2013年10月に発表した製品で、消費電流が500μAと小さく、周波数が1kHz時の入力換算雑音電圧を5.5nV√Hzに抑えるなど、低周波数領域でのローノイズを実現した。
新日本無線の取締役執行役員で半導体販売事業部長を務める村田隆明氏は、「UMCの製造プロセス技術によって、CMOSトランジスタ特有の1/fノイズを低減できた。RFノイズの耐性も向上し、微小な信号を扱うセンサーアンプなどの用途に適している」と話す。また、ユー・エム・シー・グループ・ジャパンの社長を務める張仁治氏は、「アナログICはデバイス構造がIC性能に大きく影響する。アナログICはカスタム性が強いので、共同開発の成果を汎用的に活用するのは難しいが、共同開発を通じてUMCのアナログ技術に対する理解度は一段と深まった」と語る。さらに、「従来のプロセスポーティングによるアウトソーシングは、特定製品の製造委託にとどまるが、共同開発した製造プラットフォームを活用すれば、市場の動向を見ながらハイスペックなアナログICの開発/製造を行うことができる」(張氏)と、半導体チップ企業とファウンドリ企業の新たな協業手法であることを強調した。
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