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米国勢に負けない! 高収益アナログICメーカーを目指しトレックスが株式上場ビジネスニュース 企業動向

トレックス・セミコンダクターは2014年4月8日、株式上場に伴う会見を都内で開催し、高性能アナログ電源IC分野で先行する米国メーカーと競合しながら、中長期的に営業利益率25%以上という高い収益性を目指す方針を示した。

» 2014年04月09日 12時35分 公開
[竹本達哉,EE Times Japan]

 電源ICベンダーであるトレックス・セミコンダクターは2014年4月8日、東京証券取引所JASDAQへの株式上場に伴う会見を行い、「利益率を重視した高収益アナログ半導体メーカーを目指す。米国の高収益アナログ半導体メーカーと競っていく」(社長の藤阪知之氏)との方針を明らかにした。

 トレックスは1995年に、1989年設立の旧トレックス・セミコンダクターのアナログ電源IC事業を承継する形で設立された半導体メーカーだ。「もともと携帯型ステレオカセットプレーヤー向けの電源ICを製造する目的で設立された半導体メーカーであり、携帯電話機や携帯ゲーム機、そしてスマートフォンとモバイル機器の進化とともに成長してきた。そのため、小型化、低消費電力化技術に強みを持つことができた」と藤阪氏は設立当初を振り返りながら、トレックスの強みを説明する。

 ただトレックスのこれまでの成長は右肩上がりではなかった。

リーマンショックで赤字転落

 2008年のリーマンショックの影響で、「(主力用途である)モバイル機器のコモディティ化が一気に進み、低価格競争だけの世界となってしまった」とトレックスの業績も急速に悪化し、営業赤字に転落した。

トレックス・セミコンダクター 社長の藤阪知之氏

 危機を乗り越えたのは、産業機器、車載機器市場への参入だった。「12Vを下回るような低電圧領域での技術力は、(産業機器、車載機器市場で高いシェアを握る)米国のアナログ半導体メーカーに決して劣らないレベルにある。そのトレックスの優れた小型化、高精度化、低消費電力化技術を評価し、買ってもらえる分野へシフトした」と、絶対的な自信を持つ技術力を背景に新市場へ挑んだ。同時に、従来のモバイル分野でも「トレックスの技術を高く買ってくれる分野に集中した」と売り上げ規模の縮小を省みず、利益重視を徹底した。

 その結果、2012年度には、営業利益率6.6%の営業黒字への転換を達成。さらに2013年度は営業利益率15%以上を達成する見込み(第1〜3四半期実績で15.5%)。利益確保に苦しむ国内半導体業界にあって、極めて高い収益性といえる。藤阪氏も、「競合は、25%から40%以上の営業利益率を誇る米国の高収益アナログ半導体メーカーだ」と目線は完全に海外へと向いている。

トレックス・セミコンダクターの直近の業績見通し

 収益性を一気に改善させたトレックスではあるが、まだまだ競合の米国アナログ半導体メーカーと肩を並べたとは言い難い。ビジネス規模、シェア、そして「重要な経営指標」という営業利益率でも、米国アナログ半導体メーカーには及ばない。

営業利益率25%が目標

 「中長期的に目指しているのが営業利益率25%の達成だ」とする藤阪氏は、現状の営業利益率15%から25%へ引き上げるための課題として「まずは現時点で35%程度の産業機器/車載機器向け売上比率を5割以上に引き上げること。5割以上を達成できれば、おのずと営業利益率20%を達成できるだろう」ともくろむ。

 しかし、産業機器/車載機器でのビジネス拡大は容易ではない。「低耐圧分野では、競合にも勝る技術力があるが、中高耐圧ではまだまだ。何より、これまでトレックスは民生機器向け中心だったため、産業機器/車載機器市場での知名度がないに等しい」とし、中高耐圧分野での実績/技術不足と、知名度の低さという2つの課題を挙げた。

 そして、この2つの課題を解決する1つの施策が、今回の株式上場だった。「株式上場は資金調達以上に、トレックスの知名度、ブランド力の向上を狙った」と言い切る。「上場企業となることで、優秀なエンジニアをより獲得しやすくなる」と技術面での効果も見込む。もちろん上場により調達した資金も、“打倒、米国メーカー”に向けて有効活用する。「CADなど製品開発用機器や技術リソースの増員、さらには海外での産業機器/車載機器向け製品の販売力強化を目的にした海外販売子会社への投資に、調達資金を費やす」との考えだ。

 藤阪氏は、「われわれは、電源ICの周辺回路を含めたシステム提案力、サポート力で競合に先行していく」と競合に追い付くだけでなく、競合を追い越していくイメージも持つ。技術力に物を言わせた数社の米国メーカーが高い収益を上げながら占有し続けてきた高精度アナログ電源IC市場。日本の半導体メーカーであるトレックスが真っ向から挑む。

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