成長する自動車市場に広範な製品群を展開することで、シェア上昇を狙うインフィニオンにとって、もう1つ大きな伸びしろがある。それが日本の車載市場だ。
「欧州、韓国で1位、北米で2位、アジア/太平洋地域でも2位」(Hanebeck氏)と主要な自動車市場でトップクラスの車載半導体シェアを獲得するも、日本ではこれまでシェア下位に甘んじてきた。日本の車載市場は、ルネサスをはじめとした日系の競合が多く存在し、外資系メーカーの多くが苦戦を強いられる市場であり、インフィニオンも例外ではなかった。
インフィニオンの日本車載市場への参入は、前身のシーメンス半導体部門時代の1990年代にさかのぼる。パワーデバイスやセンサーの極一部の製品に限ってビジネスをスタートさせた。
展開する製品を一部に限定したのは、確実に日本の自動車関連メーカーからの信頼を得るため。十分な品質、サポートが提供できる範囲内で、時間を掛けながら慎重にビジネスを立ち上げてきた。
成長のスピードこそ、ゆっくりとしたものだったが、堅実なこの戦略が功を奏し、ここ数年でその成果が表れてきている。
着実に市場からの信頼を得ながらビジネス規模を拡大し、車載ビジネス専属スタッフは約70人を数えるまでになり、マイコンを含む全ての製品を扱える体制を築いた。それに伴い日本市場での車載半導体売り上げシェアも、「2010年に6位、さらに2013年には3位まで上昇した」(Hanebeck氏)。シェア上位は、ルネサス、東芝の日系2社を残すのみとなり、「外資系メーカーとして車載半導体シェアトップ」にまで躍り出た。
最近では、日本の主要電装品メーカーからエンジンコントロール向けマイコンを受注するなど、日系の競合メーカーが強さを発揮してきた“日系の牙城”といえるような領域でさえも、切り崩しはじめている。
グローバルで攻勢を掛ける“クリーン”“セーフティ”“スマート”という先進的な成長分野での受注も着実に獲得しているという。近く車載レーダー用のSiGe(シリコンゲルマニウム)チップを搭載したRFパッケージ製品の納入を開始する他、マイコン、RFトランシーバ、電源デバイスなどから成るADAS向けチップセットの供給も始まる見込みだ。
Hanebeck氏は、「日本のユーザーから、品質、コスト、納期のニーズを学び、対応するための投資を行ってきた結果、信頼を得ることができた。レーダー用、ADAS用製品の受注も獲得しており、今後5年間で日系自動車関連顧客向け売上高は年率15%のペースで伸びる見通しだ」と語っている。
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