東芝が2014年5月8日に発表した2013年度(2014年3月期)決算は、1年を通じて高水準の売上高、利益率を維持したメモリ事業が大きく貢献し好決算となった。ただ、2014年度に入り、メモリ需要が減少傾向にあり、利益率を維持するための生産調整を検討していることも明かした。
東芝は2014年5月8日に発表した2013年度(2014年3月期)決算は、構造改革に取り組むテレビ/PCなどのライフスタイル部門も含めた全事業部門で前年比増収を記録し、売上高で前年比13.5%増となる6兆5025億円を達成するなど好決算となった。営業利益も、1年を通じてNAND型フラッシュメモリが高い利益率を維持したことなどにより、前年比47.0%増の2908億円と大幅伸長した。
大幅な売り上げ/営業利益増の主因となったのは、電子デバイス部門。主力のNANDメモリが1年を通じて好調に推移した。
NANDメモリの売価ダウンが生じた第4四半期(2014年1〜3月)についても「売価ダウンを微細化によるコストダウンで補った」(副社長の久保誠氏)結果、売り上げ、利益率ともに高水準を維持。NANDメモリの年間売上高は前年の5290億円から8269億円に急拡大した。事業改革を進めたディスクリート、システムLSIの両ビジネスは、システムLSIが前年比減収となったものの、ともに営業増益、営業黒字を達成した。
同じ電子デバイス部門のHDDを主としたストレージビジネスも好調で増収を記録。その結果、電子デバイス部門の2013年度売上高は1兆6934億円で前年比32%増。営業利益は2385億円と過去最高を達成した。
ただ、2014年度の電子デバイス部門業績としては、売上高1兆7100億円、営業利益1800億円の増収減益を予想。減益要因としては、「NANDメモリの受給バランスが足元、緩んでおり、この第1四半期(2014年4〜6月)は微細化のコストダウンでは補いきれないほど売価ダウンしている」(久保氏)とNANDメモリの利益率低下を挙げる。
またNANDメモリの2014年度ビジネスの見通しとして久保氏は、「(NANDメモリの売り先を)スマホからエンタープライズ、産業機器へと移そうとしているが、まだまだスマホのウェイトが高い。そのスマホは中国系スマホメーカーの存在が無視できなくなっている。中国系メーカーに対しては、メモリ容量が小さい上、3ビット/セル品などの低価格品を提案しており、商品構成として売価が下がる傾向にある」とした。さらに久保氏は、現状のNANDメモリ価格の下落に対し、「小まめに生産調整を行い価格をコントロールする」と生産調整の実施についても示唆。「(NANDメモリの工場である)四日市工場は基本的にフル稼働状態にあり、現時点では、在庫で(需給バランスを)調整している状況。生産調整については検討段階」と付け加えた。なお、電子デバイス部門の2014年度設備投資額は、2013年度と同じ2000億円を計画している。
2013年度、事業部門別で唯一、営業赤字を計上したライフスタイル部門については、2014年度に不振のテレビ、PCの両ビジネスともに黒字化させ、部門全体として「何としても黒字化させる」(久保氏)とした。
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