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「総合力」を強みに次世代ワイヤレス市場に挑むテスト/計測 アジレント

ワイヤレス通信市場が最大用途市場となっているアジレント・テクノロジー。長く同市場に注力し続け、あらゆるワイヤレス通信に関するあらゆるニーズに応えられる製品/技術サポート力を築き上げてきた。現在、研究開発、規格化が進む第5世代携帯電話方式や自動車、産業機器といった新たに無線通信応用領域に対しても「総合力」を強みにリーディング企業の地位を狙う。

» 2014年05月26日 11時30分 公開
[竹本達哉,EE Times Japan]

 アジレント・テクノロジー(以下、アジレント)の電子計測事業にとって、ワイヤレス通信市場は最大の用途市場だ。現在、同事業売上高のおよそ4割をワイヤレス通信関連向けで占めている。前身のヒューレット・パッカード(HP)電子計測機器事業部門時代(1999年まで)も含めて、常に主力用途市場として事業展開していて、2014年8月1日に予定する会社分割後の電子計測事業継続会社「キーサイト・テクノロジー」(以下、キーサイト)でも、「ワイヤレス通信市場は主力用途であり続ける」(アジレント日本法人社長でキーサイトでも日本法人社長を務める梅島正明氏)とワイヤレス通信向けビジネスを重視している。

売上高の4割

 デジタル方式の携帯電話や無線LANが登場する90年代以前から無線通信事業を展開してきた歴史を持つアジレントにとって、無線通信向け計測機器市場での強みは「総合力」にある。その代表例が、「製品ラインアップの広さ」だ。

ワイヤレス通信の各工程で要求される計測試験装置/サービスを手掛けるアジレントのイメージ (クリックで拡大) 出典:アジレント・テクノロジー

 無線通信機器の開発〜製造には、各工程でさまざまな計測/試験装置が必要になる。仕様策定段階ではPCベースの各種シミュレータ、試作やデバイス評価段階では、スペクトラムアナライザや信号発生器、パワーメーターなどが必要であり、製造/保守段階においても各種テスターを要する。

 また、これらの計測/試験装置は、基地局と携帯電話機では求められる要素が異なることも多く、それぞれのニーズに応じた装置が必要になる。最近では、電力メーターや自動車、産業機器などこれまで無線とは無縁だった機器にも無線機能が搭載されるようになり、無線関連計測機器へのニーズはより多様化している上、無線通信技術自体も多くの規格が登場している。全ての要求に応える製品ラインアップをそろえるには一朝一夕にいかない。

2014年、ラインアップがさらに強固に

アジレント日本法人社長の梅島正明氏

 ワイヤレス通信市場で長い歴史を持つアジレントでも、全てに応える製品ラインアップの構築には時間を要したが、「ワイヤレス通信に関わる設計/テストのライフサイクルを全てをカバーする製品ラインアップを構築する上で、足りていなかった部分を埋める新製品を2014年前半に投入できた」(梅島氏)という。

 幅広い製品ラインアップをより強固にした新製品の1つが、ワンボックステスタ「E6640A EXMワイヤレステストセット」だ。信号発生器、アナライザを一体化したワンボックステスタで、携帯電話機/スマートフォンなど無線端末を最大32台同時測定できる量産ライン向けの装置となっている。2G、3G、LTEはもちろんLTE-Advancedに対応。さらにBluetoothやMIMOを採用するIEEE802.11acを含む無線LANのテストも1台で実施できる。

「E6640A EXMワイヤレステストセット」の概要 (クリックで拡大) 出典:アジレント・テクノロジー

 また2014年2月には、無線通信端末やデバイス開発現場向けのワイヤレステストセットとして、「E7515A UXMワイヤレステストセット」を投入した。4Gと4G以降の無線通信規格の機能試験、RF設計検証向けの製品で、ダウンリンク速度が最大300Mビット/秒のLTE-Advanced Category 6に対応。さらに、今後、登場するであろう新たな規格に対応することが可能な製品アーキテクチャを採用し、次世代型のワイヤレステストセットとなっている。

 アジレントでは、充実する製品ラインアップを、新たな技術、規格の登場に合わせてさらに強化していく方針で、今後、規格化が予定されている5Gや5Gに採用される技術に対応した製品も順次開発し、市場投入していく方針。

 「5Gでは、大きく技術が進化する。これまで4×4、8×8程度だったMIMOが100×100以上になるのが代表例だ。これまでの計測システムでは対応しきれず、より簡単に、低コストで計測、試験できる技術、製品の研究開発を進めている」という。また梅島氏は、「電子計測事業部門がキーサイト・テクノロジーとして独立した後は、より研究開発への投資を拡大できる見込みであり、5Gに向けた技術/製品開発は一層、加速するだろう」とする。

5Gへの対応進む

 ただ、既にアジレントは5Gの実現を目指した先進的な技術研究開発に対応する製品ソリューションも積極的に投入中で、実績を積んでいる。例えば、広帯域MIMO信号生成用途へは、広帯域、高分解能を誇る任意波形発生器(AWG)「M8190A」を展開。M8190Aは、AXIeベースのモジュール式AWGであり、多数のアンテナで構成するMIMOへもコンパクトに対応可能だ。同様にデジタイザとしてもAXIeベースの「M9703A」があり、広帯域MIMOの評価環境が整っている。

5Gなど次世代の広帯域、マルチチャンネルに対応するAXIeベースのモジュール式計測/試験装置例 (クリックで拡大) 出典:アジレント・テクノロジー

 このようにワイヤレス通信の先端の技術研究から、試作、量産までをカバーする製品ラインアップに並んで、もう1つ大きな強みがあるという。「ユーザーは、無線技術が高度化する中で、計測/試験装置を購入しただけで、全て使える訳ではない。また複数の装置を使い連携させることも必要。アジレントは、あらゆる装置の提供だけでなく、計測/テストシステムを構築する部分でのサポート力に強みがある」とする。

 こうした強みは、5Gに向けた技術開発や4G対応の基地局/端末の開発製造だけでなく、「これから無線通信機能を搭載するであろう自動車や産業機器などの分野に向けたビジネスでも生かせる」とし、モバイル/通信機器以外の新しいワイヤレス通信の用途市場でのビジネス拡大を狙っている。

研究開発のさらなる加速に期待

 なお、先述した通り、アジレントの電子計測事業は2014年8月1日に会社分割され、キーサイト・テクノロジーとして事業を行う。梅島氏は、「会社分割後は、電子計測専業の企業となり、これまで以上に研究開発への投資が行える見込み。5Gなどに向けた新たなワイヤレス通信関連製品/技術の開発もさらに加速されるだろう」と語っている。

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