“環境整備”が必要だと言われながらも、なかなかそれができない――。そんな現実を考えると、「では、いったいどうすればよいのか」ということになります。
本コラムでは、これまで1年間の連載(「いまどきエンジニアの育て方」最新記事一覧)において、環境整備に必要なヒントを示してきました。
これらは、複数社の製造業の開発部門を中心に、下記のような取り組みを実際に行い、成果を出している実例を基にしたものです。
若いうちは専門性を高めることに目が向きがちですが、他部門(開発部門だけではなく、前後工程部門など)の業務を学ばせたり、顧客や市場を意識させたりするといった取り組みをしている会社もありました。
上司やベテランが環境や“場(コンセプトメイキングでも何でも構わない)”を用意し、そこに新入社員や若手が主人公として参画する。
これまでの事例を踏まえると、上記のようなやり方が、忙しい開発現場の若手エンジニア育成に必要ではないかと考えています。別の言い方をすれば、「教え、教わる」とは異なり、上司も部下も、ベテランも新人も「ともに学ぶ」という方がより適切かもしれません。
では、「ともに学ぶ」ためには、どういう姿勢が必要なのでしょうか。まずは、当然ですが、知識・経験ともに豊富な上司やベテラン勢が、“上から目線”ではなく、若手・新人の目線で物事を一緒になって考えることが必要です。さらに、上司やベテラン自身も、若き日のことを思い出してみましょう。「ゆとり世代」と同じようなことを言われてきたのではないでしょうか。
今の新入社員や若手は「ゆとり世代」と呼ばれますが、40代半ばから50代前半の人は筆者も含めて、「新人類世代」と呼ばれていました。
「新人類世代」の特徴は
などと示されています(参考:「平均的ニッポン人白書〈’87年度版〉」)。
今の「ゆとり世代」と何ら変わらないと思いませんか?
それでも、上司である「新人類世代」は、「ゆとり世代」に対して「最近の若者は……」と苦言を呈しているわけです。言われる側とすれば、面白くもないでしょう。
結局、昔も今も、新人や若手の特徴というのは、何も変わっていないのです。製造業を取り巻く環境の変化やグローバル化などにより、“現場のゆとりがなくなってしまった”ということが、今と昔で最も変わった点だと言えるでしょう。
さて、22回続いた本連載ですが、次回をもって最終回となります。これまでの簡単なおさらいと、若手から見た“上司の活用”についてお話します。
世古雅人(せこ まさひと)
工学部電子通信工学科を卒業後、1987年に電子計測器メーカーに入社、光通信用電子計測器のハードウェア設計開発に従事する。1988年より2年間、通商産業省(現 経済産業省)管轄の研究機関にて光デバイスの基礎研究に携わり、延べ13年を設計と研究開発の現場で過ごす。その後、組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者として、開発・技術部門の“現場上がり”の経験や知識を生かしたコンサルティング業務に従事。
2009年5月に株式会社カレンコンサルティングを設立。現場の自主性を重視した「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを提唱している。2010年11月に技術評論社より『上流モデリングによる業務改善手法入門』を出版。
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