NECと東北大の2者は、以前よりMTJ素子を使ったロジック・イン・メモリ型デバイスの実用化に向け、CAM(Content-Addressable Memory)の開発を実施している。CAMは、検索データと膨大な数の記憶データとの検出を一度に実行できる検索用ハードウエアのことで、データサーバー用デバイスの回路として多用されている。
2者が今回、作製したのは、文字検索用CAMで、一度に最大32文字×4000語のデータ(容量換算で1Mビット分)を検索語と一致しているかどうかを判別できる性能を持たせた。
シングルコアプロセッサで、同様の検索を行った場合、検索対象の単語(索引語)を1つずつ、メモリからロードし、検索語との比較を行わなければならない。CAMでは、1回のロード、1回の比較で4000語の比較が同時に行えるが、プロセッサではロードと比較を4000回繰り返さなければならず、「CAMはプロセッサに比べ、実測で100倍程度の速度で検索できる」という。そのため、CAMは瞬時に検索を終えることができ、プロセッサに比べて「1/100以下の消費電力で同一処理が行えることを確認した」という。
ただ、MTJ素子を使わず、SRAMを使った揮発性CAMでも、同様の並列処理、高速処理が行える。今回、2者では、MTJ素子を使った不揮発性CAMとしての利点を生かし、揮発性CAMと比較しても「消費電力を1/100程度で検索処理が行える」(NEC/東北大学)という検索手法を開発、実証した。
新たに用いた検索手法は、不必要な比較を行わず、最低限の回路だけを稼働させ、残りの大部分の回路の電源を遮断し、消費電力を抑えるというもの。例えば、最大32文字分の文字を比較する回路があるが、6文字の単語を検索する場合、余分な26文字(32文字−6文字)分の回路は全て電源を遮断する。残る6文字分も頭文字から1文字ずつ比較し、検索語と一致しなければ、2文字目以下は比較せず、回路への電源を遮断するというもの。検索語との比較回路の動作を最小限にし、消費電力を抑えるという仕組みだ。比較を行う回路は、検索語を保持し続ける必要があり、揮発性CADではこうした検索不要回路の電源遮断が行えないという。そのため、1/100という極めて低い消費電力での動作が可能になったとしている。
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