アナログ半導体では、従来、モバイル機器分野などで培ってきた電源IC技術を車載情報機器向けに応用したソリューションを同展示会に参考出品した。このソリューションは12V出力などのバッテリからの電力を5Vに変換する1次パワーマネジメント(PM)ICと、5Vから各デバイス用の1〜3Vといった電圧を作る2次PMICからなる。
特にこのソリューションの核となるのが、1次PMICだ。12Vなどの電力から5Vの電力を生成するため、降圧動作が主体だが、エンジンスタート時などに電圧降下が起こる自動車特有のコールドクランク時に、入力が5Vを下回っても5Vの出力を供給できるよう昇圧動作にも対応できる昇降圧型PMICとなっている。競合他社からもコールドクランク対応の昇降圧型PMICが市販されているが、「当社製品は、降圧から昇圧などに動作が変わる場合でも、安定した出力を継続できる点などの特長を備える。また、出力電圧も5Vに固定しているため、回路を最適化しやすく、外付け部品の小型化、高効率などの利点が発揮しやすい。また、5V固定出力のため、比較的さまざまな入力電力を許容でき、バッテリからの出力を(処理を施さずに)そのまま入力しても±1%未満の誤差で5V電圧を安定出力できる特長がある」という。
入力電圧範囲は2.5〜42Vで、最大出力電流は「クラスタなどの用途に最適な2.4A」。変換効率は「2015年の発売に向けて90%以上を目指したい」としている。
1次PMICからの5V電力を降圧する2次PMICでも、モバイル機器で実績が多数ある多チャンネル型のPMICを自動車分野でも提案していく。「複数のFET内蔵でも小型、低損失を実現できる技術力などで優位性を発揮していく。また、ノイズを抑制するため1次、2次のPMICのクロックを同期させスイッチングの位相を90°ずらして動作させるといったことも簡単に行える仕組みも備えている」としている。
フラッシュメモリでは、65nmプロセス、独自のチャージトラップ技術「MirrorBit」搭載NOR型フラッシュメモリで、シリアルインタフェースを持つ「FL-Sシリーズ」の車載情報機器向けを中心とした自動車用途への提案を強化している。
「クラスタなどは従来の機械式からディスプレイを使ったグラフィック式へと変わりつつあり、より大きなメモリ容量と高速読み取りなどが要求されている。その一方で、コストや実装サイズの抑制ニーズも高い。そうした複数の要求を同時に満たすメモリとして、これまでのパラレルインタフェース品に代わって、シリアルインタフェース品の車載分野での引き合いが増加している」という。
シリアルインタフェース品は、パラレルインタフェース品に比べピン数を低く抑えられ、システムサイズを削減できるメリットがある。そのメリットは、メモリ容量が大きくなるほど大きくなる傾向がある。
一方で、パラレルインタフェース品よりも読み出し/書き込み速度が劣るという欠点を抱える。そうした中で、スパンションでは、シリアル品ながら読み出し速度80Mバイト/s、書き込み速度1.5Mバイト/sといった高性能品をラインアップする。「これまで車載用途ではパラレル品が主流だったが、メモリ容量が増す2015年以降はシリアル品の採用が主流となる見込み。これまでの車載用途での実績をベースにシリアル品でも、業界をリードしていきたい」(同社)としている。
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